メンバー10人入れ替えの県岐阜商 拍手で包まれた執念の1得点 先発・山口「楽しかった」全力の55球

[ 2022年8月10日 04:00 ]

第104回全国高校野球選手権大会第4日・1回戦   県岐阜商1―10社 ( 2022年8月9日    甲子園 )

<社・県岐阜商>初回無死一塁、好フィールディングで二封し、笑顔を見せる県岐阜商・山口(撮影・北條 貴史)
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 新型コロナウイルス集団感染の影響でメンバーを10人入れ替えた県岐阜商が、急造チームで最後まで戦い抜いた。8回1死三塁から新規にメンバー入りした高井咲来が内野ゴロで生還。スコアボードに得点を刻むと、甲子園は拍手で包まれた。

 戦いを終えた鍛治舎巧監督は「辞退を2度考えた。でも頑張っている選手のためにも幕を引くわけにはいかない、とチームを編成した」と振り返った。3日に大阪市内で行われた抽選会後に体調不良者が発生。出場辞退を回避するため大会本部も感染拡大予防ガイドラインを急きょ改正。7日と8日の2日間の練習で初戦に臨んだ。

 陽性選手と直接会えない鍛治舎監督は「君のせいじゃない」と宿舎の館内電話で伝えた。残った選手に「岐阜に帰った選手のためにも頑張ろう。勝ち進めば、戻ってくることができる」と鼓舞した。

 先発した山口恵悟は先天性難聴で、ろう学校に通いながら野球を続け「甲子園に行きたい」と名門の扉を叩いた。努力でつかんだマウンドで5失点ながら全力の55球。「すごく悔しいけど、甲子園のマウンドは楽しかった。また必ず来たい」と部長を介したインタビューに答えた。試合には負けたが、コロナに立ち向かったもうひとつの闘いが、全国の球児の貴重な財産になるはずだ。(鈴木 光)

 ◇山口 恵悟(やまぐち・けいご)2005年(平17)6月14日生まれ、岐阜県可児市出身の17歳。生まれつきの難聴で県立岐阜ろう学校で幼稚部、小学部、中学部と学ぶ。野球は小2から今渡北少年野球団で始め、中学では中濃ボーイズでエースで4番として東海大会でも優勝。甲子園を目指し、県岐阜商に進学。1年秋からベンチ入り。50メートル走6秒7、遠投100メートル。好きな言葉は「やればできる」。1メートル74、87キロ。右投げ右打ち。

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2022年8月10日のニュース