国枝はそれまで「特別な競技」だったパラスポーツを「普通のスポーツ」にしたパイオニア

[ 2023年1月23日 04:30 ]

昨年ウィンブルドンで生涯ゴールデンスラムを達成した国枝(共同)
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 【記者の目】国枝が残した最大の功績は「パラスポーツ=特別な競技」というそれまでの概念を打ち破り、誰もが見て楽しめる「普通のスポーツ」なのだということを広く世界に示したことだろう。

 以前に取材で尋ねた際、国枝はグランドスラムについて「健常者と同時に開催される。だからファンの目に留まりやすいし、プレーの質の高さにも注目してもらえる」と説明してくれた。車いすであっても、プレーの質を高めれば観客が集まる。観客が入れば賞金も増える。賞金が増えれば、それを目指す選手も増える。「それが正しいスポーツの在り方だと思うし、そのためには勝って結果を残すこと」と勝負にこだわり続けた。

 現実にはグランドスラムであっても車いすの部の優勝賞金は600万円程度で、健常者と比べればまだまだ低い。それでもパラスポーツ界では数少ないプロ選手として、国枝は多くのスポンサーと契約し、活躍に見合う対価を得てきた。国枝の存在が他のパラスポーツの選手たちにも勇気と希望を与え、共生社会実現への機運を一気に前進させたのは紛れもない事実だ。

 「特別」ではなく「普通」であること。引退しても“偉大なパイオニア”国枝への期待は大きい。(スポニチ編集委員・藤山 健二)

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