国枝「世界1位のまま」引退 車いすテニス界のレジェンド「生涯ゴールデンスラム」達成で完全燃焼

[ 2023年1月23日 04:30 ]

引退を発表した国枝
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 車いすテニスの第一人者、国枝慎吾(38=ユニクロ)が22日、自身のSNSで現役引退を表明した。4大大会で歴代最多の50勝(シングルス28勝、ダブルス22勝)を誇り、パラリンピックのシングルスで3度金メダルを獲得。昨年のウィンブルドン選手権を制し、全ての4大大会とパラを制する「生涯ゴールデンスラム」も達成した。最新16日付の世界ランキングは1位。最強のままコートを去る。2月7日に都内で会見を開く予定だ。

 引退を決断したのは今月初旬。関係者によると、国枝は昨年末までトレーニングを続けていたが、今季4大大会初戦となる全豪オープンに向けたモチベーションを見いだせなかったという。22日に自身のSNSで、「昨年10回目の年間王者になった事で、もう十分やりきったという感情が高まり、決断した次第です。最後まで世界1位のままでの引退は、カッコつけすぎと言われるかもしれませんが、許してください(笑)。最高の車いすテニス人生でした」と記した。

 06年に世界ランキング1位に初めて就き、09年に大学職員を退職してプロ転向。15年以上も世界のトップに君臨した。16年の右肘手術後は、患部に負担のかからないフォームに改善するなど向上心を持ち続け、4大大会で歴代最多50回の優勝を積み上げた。21年に競技人生の最大目標だった東京パラで金メダル。その後は引退が頭をよぎる中でプレーを続け、昨夏に男子史上初の生涯ゴールデンスラムを達成したことで完全燃焼した。未来の日本車いすテニス界を世界4位の小田凱人(16=東海理化)ら有望な後進に託す。

 ラケットに座右の銘「オレは最強だ!」と書いたテープを貼り、勝利を追求してきた。国内唯一のATPツアーである楽天オープンに車いすテニス部門の導入を働きかけ、19年に実現させるなどコート外での功績も大きい。今後は未定だが、車いすテニス界の発展につながる活動を幅広く行う方針だ。名実ともに最強のパラアスリート。第二の人生も活躍が期待される。

 ◇国枝 慎吾(くにえだ・しんご)1984年(昭59)2月21日生まれ、千葉県出身の38歳。麗沢高―麗沢大卒。9歳の時、脊髄腫瘍による下半身まひで車いす生活となり11歳で車いすテニスを始める。07年全豪オープンで4大大会を初制覇し、同年に史上初の年間グランドスラムを達成した。09年に麗沢大職員を退職してプロ転向。パラリンピックは04年アテネから21年東京まで5大会連続出場。シングルス3個、ダブルス1個の金メダルを獲得した。4大大会シングルスでは全豪11回、全仏8回、ウィンブルドン1回、全米8回の優勝。座右の銘は「オレは最強だ!」。身長1メートル73、右利き。

 ≪国枝偉業アラカルト≫

 ☆07年 1月の全豪オープンで4大大会初制覇。同年の全仏、全米も制し、年間グランドスラムを達成した(ウィンブルドン選手権は16年から車いす部門シングルスを導入)。

  ☆08年 北京パラリンピックの男子シングルスで金メダルを獲得。斎田悟司と組んだダブルスでも銅メダルを手にした。

 ☆21年 東京パラリンピック男子シングルスで優勝。日本選手団主将を務める重圧に勝ち、2大会ぶり3度目の金メダルに輝いた。

 ☆22年 6~7月に開催されたウィンブルドン選手権を5度目の出場で初制覇。チェアワークが難しい芝を攻略して、パラリンピックと全4大大会を制する生涯ゴールデンスラムを成し遂げた。

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2023年1月23日のニュース