駒大 完全Vで決めた史上5校目の3冠 勇退の大八木監督を“男”にした!

[ 2023年1月4日 05:30 ]

第99回東京箱根間往復大学駅伝 復路 ( 2023年1月3日    神奈川・箱根町~東京・大手町 5区間109・6キロ )

優勝に沸く駒大の選手たち(撮影・白鳥 佳樹)
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 往路優勝の駒大が復路も5時間24分1秒で制し、総合10時間47分11秒で完全Vで2年ぶり8度目の頂点に立った。山下り6区の伊藤蒼唯(1年)が区間賞の走りで流れをつくり、9区の山野力主将(4年)らも盤石のレース運び。史上5校目となる、出雲、全日本と合わせた学生駅伝3冠を、3度目の挑戦で達成した。レース後、大八木弘明監督(64)が今年度限りの勇退を発表。藤田敦史ヘッドコーチ(46)が監督に昇格する来季、史上初となる連続3冠の偉業に挑む。

 この瞬間だけのために、頑張ってきた。駒大の藤色のたすきが、大手町に帰ってくる。アンカー青柿(3年)がゴールテープを切ると、歓喜の輪が出来上がった。10月の出雲から合わせて369・0キロの旅路をトップで走り抜いた学生駅伝3冠。「往路も復路も総合優勝もできたので最高の形で終わった」。山野主将がチームの思いを代弁した。

 復路でも総合力が違った。山下りを託されたのは、当日変更の1年・伊藤。山下りの終わったラスト3キロから運営管理車に乗る大八木監督から、あの言葉が飛んだ。「男だろ!」――。一時は中大に詰められたが、往路終了時点で30秒だった貯金を47秒まで広げた。

 「いざ自分が(男だろと)言われる立場になると、気合が入った」と伊藤。唯一の区間賞の快走で流れに乗ると、あとは独り旅だ。ハーフマラソン日本学生最高記録を持つ山野も「たすきを渡した瞬間に優勝を確信した」。スーパールーキー佐藤圭汰は体調不良で投入できなかったが、それを差し引いても地力があった。

 新年度を迎えた昨年4月、山野主将やエース田沢ら4年生は指揮官に「3冠を目指しましょう」と訴えた。志賀高原での夏合宿。最終日に昼食を終えた山野、田沢、円の3人は大八木監督に呼ばれた。「今年で監督辞めるから。藤田に譲ろうと思う」。勇退を明かした指揮官は、泣いていた。選手は本気。だが、64歳はそれ以上に懸けていた。

 「監督の涙は見たことがない。有終の美を飾ってあげたい。自分たちも思いに応えたいな、と本気になった」と山野。秘密を抱えた3人の4年生が練習を背中で引っ張り、後輩たちは飛躍的に力を伸ばした。「4年生がつくってくれた最高のチーム」と8区の赤星(3年)。選手の決意と指揮官の覚悟が重なって、大八木監督を男にする道ができた。

 今大会の10区間で走った4年生は3人のみ。7人は来季も主力となる。「まだどこもやったことのない2年連続3冠を目指してほしい」。総監督へと退く指揮官が託した、次なる願い。その偉業が達成されたとき、駒大は令和の常勝軍団と呼ばれる。

 ≪当日変更6区で「父の夢かなえた」≫6区の伊藤は下り坂でもブレーキをかけない走りに山下り適性を見いだされ、当日変更で抜てきされた。エントリーされていた同学年・帰山の「代わりになれた」と任務完遂に胸を張った。父・桂太さんは山梨学院大のランナーだったが、3大駅伝の出場経験はなし。自身も出雲工時代は目立った実績こそないが、1年時に出場した競技会で大八木監督にスカウトされて駒大進学。「父の夢をかなえられてよかった」と親孝行を喜んだ。

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2023年1月4日のニュース