御嶽海 山口国体で見せた3年先見据えた「チャレンジャー精神」

[ 2022年1月27日 05:30 ]

大関昇進 御嶽海 3つの武器(下)

大関昇進の伝達を受け、会見する御嶽海
Photo By 代表撮影

 2011年の山口国体だった。長野県の関係者が準々決勝で敗れた大道久司(現・御嶽海)の内容に辛辣(しんらつ)な言葉を浴びせた。「なんで普段取らない相撲を取ったんだ!」。相手はのちにアマチュア相撲の世界王者となる強豪、五十嵐敦(岩手)。突き押し主体の大道は、大事な勝負でもろ差しを試みた。思惑通り2本入ったが体格で上回る相手に両腕をきめられ寄り切りで敗戦。周囲の多くは落胆する中で、中学時代の恩師、安藤均さんの見立ては違った。「大一番でいつもと違う相撲を取った。改めて大関の凄さを感じた」。

 相撲界には「3年先の稽古」という言葉がある。目先のことに固執せず先を見据える――。御嶽海の失敗を恐れないチャレンジャー精神は「3年先の成長」を見込んでのものだった。得意は「押し」。左右の四つ相撲でなく、突き押しでもない。自分の型を持つことが良しとされる世界では希有(けう)だが、取り口に幅を持たせることができる利点もある。初場所14日目。結果的に大関昇進を決める一番となった宝富士戦では立ち合いで右を固めつつ、左からのかち上げで攻めた。二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)は「過去に見たことがない攻め。時に違った立ち合いを見せることも効果的」と分析した。

 先を越されたライバル2人は大関の地位を守ることで精いっぱいとなっている。遅咲きの大器に対する周囲の期待は高まる中、大関獲りの最中でも頂点を見据えた29歳。その挑戦は、場所中に始まっていた。(特別取材班)=終わり=

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2022年1月27日のニュース