御嶽海 バック転もこなす抜群の運動神経が生んだ「前に出る力」

[ 2022年1月26日 05:30 ]

大関昇進 御嶽海 3つの武器(中)

中学2年時の浪速武道館大会に出場した御嶽海(左端)
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 御嶽海こと大道久司少年は小学校から全国の主要大会で活躍し、地元では「長野に大道あり」と言われた逸材だった。上松町に相撲部がなかったため中学は電車で隣接する木曽福島町(現木曽町)に通学。福島中の相撲部顧問だった安藤均さん(63)との出会いが転機となった。当時は今とは違う四つ相撲。安藤さんは「立ち合いで左にずれながら上手を取ることが多かった。将来のことを考えればそれを直すことが大事だった」と明かす。

 指導の原点は「勝敗にこだわらない、前に出る力を鍛える」。大道少年は父・春男さんとの約束で1日400回の四股を踏み、運動神経も抜群だった。球技はもちろん、器械体操のバック転も難なくこなしたという。恵まれた体格から導き出されるパワーを押す力に変えることを3年間徹底。「前に押す力を確立させたことが、原動力になっている」と安藤さんは証言する。

 木曽青峰高では、体の大きな生徒が苦手な木登りなどの実習もお手のもの。太腿裏などの筋力の数値が一流アスリート並みだったという。指導した尾羽林英樹さんは「出足の鋭さに加え、2歩目のスピードも抜けていた」と振り返る。その姿から立ち合いで圧力をかけ、抜群の体の寄せで畳みかける現在の取り口が思い浮かぶ。

 幼少期は猟犬の訓練に出かける父と一緒に木曽の山々を駆け回っていたという。のどかな土地でのびのびと相撲道に励み、素質を開花。木曽で力士に大事な基礎を叩き込んだことが、成功への武器となった。(特別取材班)

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2022年1月26日のニュース