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東京五輪 “お願いベース”の限界…バブル実効性に課題 IOCコロナ対策自賛も「陽性率」に疑問

[ 2021年8月9日 05:30 ]

閉会式が行われている国立競技場周辺に集まる人々(撮影・島崎 忠彦)
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 【検証 東京2020(上)】史上初となる1年延期と、ほぼ無観客で実施された異例の五輪が閉幕した。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない状況で「安心・安全な大会」は実現できたのか?コロナ対策や運営面の問題などを3回に分けて検証する。(東京五輪統括キャップ・中出健太郎専門委員)

 開幕1週間後の7月29日。国際オリンピック委員会(IOC)のアダムズ広報部長は五輪と東京都のコロナ感染状況を比較して「パラレルワールド(別世界)」と表現した。入国前の2度検査や選手に対する連日検査など「世界で最も検査が行われているコミュニティー」と“身内”を自賛。選手村では既にチェコやオランダの選手団で複数の競技にまたがる陽性者が出ていたが、感染拡大を抑えていると自信を示した。

 IOCと大会組織委員会は「陽性率」を根拠にコロナ対策の有効性をアピールした。空港での検査は4万2681件のうち陽性が37件で陽性率0・09%、大会全体のスクリーニング検査では62万3364件のうち陽性が138件で陽性率0・02%にすぎず、重症者の報告はゼロ。関係者の入院は計3人のみで、地域医療にも負担はかけていないとした。

 ただ、7~8割がワクチンを接種済みとされる関係者(具体的データなし)が何度も受けた検査の総数を母数にした「陽性率」は意味がないとの指摘もある。例えば今大会で海外から来日した大会関係者4万2681人のうち、陽性者は150人。10万人あたり350人を超える計算だ。直近1週間の人口10万人あたりの感染者数が全国一の沖縄県は234人。決して少ない人数ではない。感染により大会に出場できなかった選手は最終的に計19人。8月にはアーティスティックスイミングのギリシャ代表でクラスター発生が確認され、チーム全体が棄権を強いられた。

 また、たとえ“身内”が安全でも、外部との接触を遮断する「バブル」が崩壊しては感染防止につながらない。選手は原則、選手村と競技場や練習会場の往復以外の行動は認められていないが、各国・地域オリンピック委員会(NOC)が借りた車両なら用務先を偽って外出することも可能で、実際に無断外出したケースも複数あった。組織委はコロナ対策の規則集「プレーブック(PB)」違反として参加資格剥奪などの処分を科したが、マスクを外しての応援など軽度のPB違反には注意ぐらいしか手段がなく、“お願いベース”に限界があるのは明らかだ。

 組織委のコロナ対策はIOCや各NOCからは高く評価され、武藤敏郎事務総長は8日の総括会見で「基本的な対策は十分に機能した」と自己分析した。一方で橋本聖子会長は「徹底管理してもルールを順守してもらうのは難しい」と、実効性に課題があることを認めた。「五輪は人数が多すぎる。コストも人数もかかりすぎる」。ある国際大会関係者は、東京五輪のコロナ対策がそのまま今後の大会の参考になるのでは、との見方を否定した。

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