松島負傷交代で勢い失った日本 サポートのコースが素晴らしかったSH斎藤

[ 2021年7月4日 07:00 ]

ラグビーリポビタンDツアー2021   日本31―39アイルランド ( 2021年7月3日    ダブリン )

フィフィタのトライに喜ぶ日本代表(AP)
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 【砂村光信・視点】FB松島が負傷交代してからジャパンのアタックには勢いがなくなり、逆にアイルランドは勢いづいた。それまでの松島は緩急をつけながら、FBやWTBのポジションにとらわれず、ピッチ上のさまざまな穴を突いて味方も生かしていた。フィフィタとマシレワの両WTBも松島に応じてポジションを変えながら動くので、アイルランドのディフェンスは的が絞りづらかったはずだ。

 だが、松島と交代で入ったゲイツは自分のポジションに忠実で、フィフィタとマシレワがポジションチェンジすることもなかった。ゲイツは代表に合流して日が浅いため仕方がない部分もあるが、アタックに幅をつける松島を警戒し、目に見えないプレッシャーを受けていたアイルランドからすれば単調になったアタックは守りやすかったのではないか。

 一方で、アイルランドは前半と後半でアタックを変えてきた。ファレル・ヘッドコーチの就任後は以前よりもバックスを使うようになっているが、後半はFWの近場で崩してきた。顕著だったのが、ラインアウトからボールを受けたSHがブラインドWTBを使い、SOの位置を狙って仕掛けてきた場面だ。ジャパンは田村がブラインドWTBの位置に入り、代わりにフィフィタがSOのポジションにいたが、止まってディフェンスをしていたため食い込まれてしまい、トライまで持っていかれた。フィフィタが前へ出ないとバックスライン全体が前へ出られない。試合中に分析して対応してきたアイルランドに対し、日本は前半にバックスライン全体が前へ出る良いディフェンスをしていただけに、もったいなく感じた。

 初先発のSH斎藤は激しいプレッシャーを受けながらも、確実にボールをバックスへ供給していた。トライの場面では味方のカウンターに対するサポートランのコースが非常に良かった。SHとしては常にボールのそばにいるが、WTBからボールをもらう時は一度右へ開き、受ける瞬間にトップスピードになれるコースを走った。普通に受けていたらつかまりそうな場面で追いつかれないコースを走れたのは意図的か、それともひらめきか。アタックに緩急をつけるSH田中のようなずる賢さはまだなく、パスを放るだけで精いっぱいにも見えたが、新戦力の中では自分の特色を最もアピールできたと思う。(元U―23日本代表監督)

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2021年7月4日のニュース