【荒磯親方 春場所総括】照ノ富士“4大関”で抜け出した 若隆景は大関狙える

[ 2021年3月30日 05:30 ]

14日目、朝乃山(右)を寄り切りで破る照ノ富士
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 終盤まで優勝争いがもつれた大相撲春場所は、関脇・照ノ富士(29=伊勢ケ浜部屋)が12勝3敗で4場所ぶり3度目の優勝を果たした。序二段から史上最大のカムバックで大関再昇進を確実とした照ノ富士に加え、若手の躍進が目立った「荒れる春」をスポニチ本紙評論家の荒磯親方(元横綱・稀勢の里)が総括した。

 場所前に優勝して再昇進を決めてほしいと期待していましたが、照ノ富士には「安定感」がありました。10日目までに3敗し、その時点でトップと2差。それでも諦めずに終盤で集中力を発揮したことは見事でした。右四つで前に出る相撲は多くはなかったですが、相手のかいなを抱え込む相撲で勝てたのも技術の裏付けがあったからこそ。脇の下、二の腕の付け根あたりをしっかりと押さえる。急所を押さえられては相手はさじを投げることしかできません。

 最大の見せ場は14日目の朝乃山戦。コラムでも指摘しましたが、立ち合いで相手にもろ手突きを選択させたことが勝因だった。過去4回の対戦で苦手意識を植え付けたことに、凄みすら感じました。夏場所は4大関となりますが、一歩抜け出した印象です。爆弾を抱える膝が問題なければ、綱獲りの夢はぐっと近づくはずです。

 その一方で3大関は良さを出せなかった。貴景勝、朝乃山は大関の勝ち越しといわれる10番はクリアしたが、序盤で3つも星を落としたのがもったいない。正代は最後まで立ち合いを修正できなかった。鶴竜が引退。白鵬も7月の名古屋場所で進退を懸けるといわれている中、大関への期待、重圧は大きくなるでしょう。照ノ富士の再昇進が3人の刺激になることを期待します。

 新たな波は確実に押し寄せています。技能賞を獲得した若隆景には新三役どころか、それ以上(大関)も狙える可能性を感じました。とにかく「右おっつけ、はず押し」が半端じゃない。小よく大を制すと言われますが、彼の相撲を見てその言葉を思い出しました。もし私が師匠なら彼の取り口を教科書にして弟子に見せたいくらいです。あの体で全くぶれないのも素晴らしい。体が大きくなったことを考えると、今後が楽しみでなりません。(元横綱・稀勢の里)

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