11カ月ぶり公式戦復帰 桃田賢斗の“進化”を専属トレーナーが証言“獲物狙うチーター”

[ 2020年12月21日 05:30 ]

22日開幕 バドミントン全日本総合選手権

桃田(左)をケアする森本トレーナー(UDN SPORTS提供)
Photo By 提供写真

 22日開幕のバドミントン全日本総合選手権(東京・町田市立総合体育館)で、男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(26=NTT東日本)が約11カ月ぶりの公式戦復帰を果たす。桃田の最も近い場所から復活を支えてきた森本哲史(あきふみ)トレーナー(42)が、その道のりと進化した肉体について語り、仕上がり状態に太鼓判を押した。

 桃田が、いよいよ公式戦のコートに戻ってくる。昨年6月から専属の森本トレーナーは「何事もポジティブに捉えて練習してきた。普通に勝ってほしいですね。変にプレッシャーをかけすぎないようにしたい」と期待を込める。

 桃田は1月にマレーシアで交通事故に遭い、右眼窩(がんか)底骨折の手術を受けた。同乗していた森本トレーナーも右前腕部骨折など負傷したが、2月末に練習再開した桃田に合わせて現場に戻った。桃田は手術の影響で力む動作が制限される中で、羽根を打ち返すだけの反復練習やフットワークから徐々にプレーの範囲を広げていった。複視の症状は7月にほぼ完治したという。

 コロナ禍でワールドツアー中断、東京五輪の延期が次々に決定。空白の期間、桃田は初めて本格的な肉体改造に着手した。鉄壁な守備力を生かしたラリー戦が得意だが、課題は要所での攻撃力。「(相手を)一撃で沈められる力があれば」と言う桃田と話し合い、上半身中心に強化した。45キロから始めたベンチプレスは、ほぼ倍の80キロを上げる。史上初の年間11勝目を挙げた昨年12月のワールドツアーファイナル時に、72キロの体重は3キロほど減少したが、筋肉量は増大した。シャープな見た目で、努力の跡が分かる。

 森本トレーナーは桃田をチーターに例える。足の指が長く接地面が広いため、蹴る力が強い。跳躍力に秀でており、股関節の力も強いため上半身と下半身の連動した動きに無駄がない。「獲物を捕獲するように、素早く食らいつく。さらに、標的を外さない執着心がある」。肉体のしなやかさは「トップ中のトップ」と評し、サッカー元日本代表の香川真司らかつて担当した他競技のトップ選手と遜色ないという。そこに力強いスマッシュも新たな武器に加わる。

 現在、桃田は練習試合や対外試合では無敵状態という。森本トレーナーは「以前よりパワーアップしている。日本の選手には負けないと思います」と太鼓判。23日の1回戦で森口航士朗(埼玉栄高)と対戦。悲願の金メダル獲得へ、時計の針が再び動きだす。

 ▽桃田の交通事故 マレーシア・マスターズ決勝翌日の今年1月13日、宿泊先からクアラルンプール国際空港へ移動中のワゴン車が高速道路で大型トラックと衝突。現地の運転手は即死。桃田は顎部裂傷、眉間部裂傷、唇裂傷、全身打撲。大量出血した眉間を縫合手術した。森本トレーナーは右前腕部骨折、脳振とう、全身打撲、平山優サポートコーチは右脛部(けいぶ)裂傷、全身打撲と診断。桃田は2月の日本代表合宿に合流した際に右目の不調を訴えて眼窩底骨折が判明。手術に踏み切った。

 ◆森本 哲史(もりもと・あきふみ)1978年(昭53)10月13日生まれ、高知市出身の42歳。02年に明治鍼灸大を卒業。04年から12年までサッカー現J2千葉のトップチームトレーナー。13年からドイツ、スペインで海外サッカー選手を個人サポートし、現在は株式会社KITAERU専属トレーナーとして桃田らをサポートしている。

続きを表示

この記事のフォト

2020年12月21日のニュース