【荒磯親方 7月場所総括】照ノ富士の精神的強さ 正代、御嶽海、大栄翔“朝乃山効果”で次期大関に名乗り

[ 2020年8月4日 05:30 ]

千秋楽、膝をかばいながら土俵を降りる照ノ富士
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 照ノ富士は劇的な復活でした。これまでは発言や顔つきにも荒々しさがあったのですが、今場所は非常に落ち着いていて、精神的にも強くなって戻ってきた感じです。大関から落ちた頃とは違い、下半身が安定していて、しっかり相手の当たりを受け止めていました。左の上手が早かったのも下半身が崩れていなかったから。以前のように抱え込みながら出るとケガにもつながりますが、オーソドックススタイルになって、ケガをしない相撲になってきました。ああいう相撲であれば相手に力が伝わります。千秋楽の御嶽海戦などは上位でもやれるな、という内容でした。

 新大関で12勝を挙げた朝乃山は立派な成績だったと思います。連勝していた前半の強さは素晴らしいものがありました。しかしながら、照ノ富士戦以外の負けた2番は、自分次第の負け方でした。完全に自分を見失っており、御嶽海戦は我慢しなければいけないところで出てすくい投げを食らい、照強戦も無理に出て足を取られました。ミスをなくして勝ち星につなげていけば優勝の目(13勝以上)でした。それをなくすための稽古や研究ができれば、優勝回数は増やせるはずです。

 正代、御嶽海、大栄翔は三役で10勝以上を挙げました。次期大関候補が出てきたのは、朝乃山効果でしょう。誰か先にいけば、“自分もいける”という気持ちが出てきます。その中でも正代は強さが出ていました。けんか四つの照ノ富士戦で、我慢しながら左を差せたということは力が付いた証拠。得意の反りながら攻める、反りながら残すというのを生かすためには、今後も我慢が大切になります。途中まで独り旅だった白鵬を真っ向勝負で崩した大栄翔も力を付けてきた印象です。

 4カ月ぶりの本場所でしたが、調整をしっかりしてきた力士はいい成績を残していた印象です。逆に調整がうまくいかなかった力士は筋肉が落ちていて、そのままの成績でした。出稽古ができず、いつもと違った調整を強いられたことで、明暗が分かれました。(元横綱・稀勢の里)

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