“ニャンコレスラー”文田健一郎 猫づくし休日でパワーチャージ!五輪金へ世界一の反り投げを

[ 2020年1月28日 10:00 ]

世界選手権優勝のベルトとメダルを持つ文田(左)と加藤綾子(撮影・篠原岳夫)
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 【カトパン突撃!東京五輪伝説の胎動】東京五輪代表内定第1号のレスリング男子グレコローマンスタイル60キロ級の文田健一郎(24=ミキハウス)は、反り投げの精度を上げるため日夜ギリギリまで練習で追い込んでいる。対談では日体大の先輩でリオデジャネイロ五輪59キロ級銀メダリストの太田忍(26=ALSOK)とのライバル関係や、大好きなニャンコトークなど加藤綾子アナウンサー(34)が最強レスラーを“丸裸”。笑顔が似合う素顔に迫った。

 ――東京五輪代表おめでとうございます。本番まで6カ月を切りましたね。
 「いよいよ来たという気持ち。金メダルに向けて一歩一歩、自分を成長させていきたい。今年は元日からランニングを1時間、マット練習を2時間。五輪イヤーとして良いスタートを切れたと思います」

 ――昨年9月の世界選手権で代表に内定(※1)。どんな気持ちでした?
 「凄い緊張しました。代表枠は1人。できることはやったという気持ちでした」

 ――18年に左膝じん帯をケガ。そこからの道のりは?
 「競技人生で一番大きなケガ。競技を続けたくないなとも思った。そういう時も東京で金メダルとの思いがあってここまでこられた」

 ――昨年6月の全日本選抜選手権でライバルである太田選手に競り勝ち、決着をつけた。日体大OBで仲の良い先輩との戦いはやりづらいものですか?
 「やりづらいっす。ずっと同じ場所で練習してきた先輩ですし…。9月の世界選手権では63キロ級で忍先輩が先に優勝して“俺、勝ったから”ってベルトを見せつけてくるし…あーっ、会わなきゃ良かったみたいな(笑い)」

 ――五輪に63キロ級がないため階級を67キロ級に上げた太田選手は惜しくも代表の座を逃してしまいましたね。
 「複雑な心境です。同級には大学の先輩、同期や後輩がたくさんいる。忍先輩だけに肩入れして応援することはできないんですけど、できれば一緒に五輪の舞台に立ってみたかったのが本音です」

 ――それにしても太田選手は独特な愛情表現ですね。
 「あれを愛と気づくのに、だいぶ時間がかかりました(笑い)」

 ――これまで「次はボコボコにしてやる」とか言いたい放題で精神的な揺さぶりが凄かった(笑い)。でも、対戦相手のことを教えてくれたり、的確なアドバイスをしてくれる優しさもあった。
 「世界選手権の決勝直前には“もう60キロ級はおまえしか行けないんだから、きっちり今回は勝て”と心から応援してくれた。本当に格好良いです」

 ――文田選手が代表内定を決めた後、太田選手の無言のハグも印象的でした。
 「握手すら試合の時だけですよ。ハグなんて今まで全くないです。あれにはやられました(笑い)」

 ――2人の関係は言葉では表せない。
 「ライバルでやってきて、もう競い合うことはない…一個終わったと思いました。忍先輩には感謝しかない」

 ――先輩の残念なところはありますか?
 「人のことは言えないんですけど残念なところばかり(笑い)。僕と同じくらい寝坊します」

 ――五輪本番までに強化したいところは見えてきましたか?
 「いろんな技を取り入れたいのはあるけど今から世界レベルにするのは難しい。今までの技の完成度を高めて、どんな選手にでもかけられる状態にすることが現実的。自分のレスリングをもっと高いレベルにしたい」

 ――得意な投げ技に磨きをかけていく?
 「今まで僕の代名詞としてやってきた反り投げを徹底して出せるレスリングスタイルにしたい。後ろに投げる技は反り投げだけ。それを極めたい」

 ――お父さんは強豪の韮崎工高レスリング部の監督で、12年のロンドン五輪の男子フリースタイル66キロ級金メダリストの米満達弘さんを指導された。刺激になりましたか?
 「実際に見に行って感動しました。おばあちゃんにねだって50万円出してもらった。“見に行きたい”って言ったら“いいよ、いくら?”って。これは、もうお返しするしかない(笑い)。会場は満員で、皆が米満先輩を見ていて、あの中心に行きたいと思いました。そこで夢から目標になった気がします」

 ――お父さんにその気持ちは伝えた?
 「父の方が興奮してた。“見たか!おまえ!おまえもあそこに行きたいだろ!”って。僕の何倍もの勢い。父への恩返しは東京での金メダルしかないと思っています(笑い)」

 ――減量はきつい?
 「普段は67キロくらいで60キロに落とします。1食でスポーツようかんを2個食べると練習1回ギリギリ持ちます。練習終わりはほとんど何も食べない」

 ――えーっ、そんなので補えないですよ。2個なんて私たちの間食です(笑い)。
 「最後は水も飲まずに1・5キロくらい落とす。スポーツようかんは最近パフォーマンスがほぼ同じことに気付いたのでコンビニで普通のようかんを買って食べます(笑い)」

 ――それだけ追い込んでいるんですから金メダルを獲った時のご褒美があってもいいですよね。
 「ギリシャのサントリーニ島に行きたいですね。街並みが奇麗ですし、それに猫がめっちゃいるという…」

 ――さすがニャンコレスラーと言われるだけあって本当に猫が好きですね? 
 「猫は向こうから来ない感じがいい。小さい頃から好きなんですけど、妹が猫アレルギーで飼えなかった。大学に入っても寮で遠征が多くて飼えない(笑い)。猫カフェにはよく行きます。ボクは好かれるタイプではないので、ひたすらじっと寄ってくるまで待つ」

 ――休みは?
 「映画館に行って、猫カフェ。映画はジブリ作品の『耳をすませば』が好きです」

 ――それも猫が題材(笑い)。女性のタイプは?インスタには女優の橋本環奈さんがよく登場してますね。ご褒美で会えますよ、きっと。
 「ファンです。猫という感じではないけど可愛らしい。握手するために1回だけイベントで並びました(笑い)」

 (※1)18年12月の全日本選手権と19年6月の全日本選抜選手権で太田に連勝し、19年9月の世界選手権代表の座を獲得。東京五輪代表になるには同大会での表彰台が条件で、優勝を果たして決めた。

 ▼文田 健一郎(ふみた・けんいちろう)1995年(平7)12月18日生まれ、山梨県出身の24歳。レスリングを韮崎西中で始め、父・敏郎さんが監督を務める韮崎工高に進む。国体で3連覇するなど史上初のグレコローマン高校8冠を達成。16年に全日本選手権で初優勝。日体大4年の17年に世界選手権に初出場して日本人最年少のグレコ王者となる。太田との対戦成績は6勝4敗。好きな猫はスコティッシュフォールドとマンチカン。1メートル68。

 《柔軟性見抜いた指導者の父が最強の礎に》
 【取材後記】最大の武器は世界一の反り投げ。レスリング強豪校の監督であるお父さんが体の柔軟性を見抜いて鍛錬を重ねた結果、生まれたものです。一流アスリートは家族が指導者であることが多い。文田選手は格好良い投げ技の映像をいっぱい見て育ちました。小さい頃から競技が身近にある環境が最強への礎をつくったのでしょう。
 その才能に磨きをかけたのが2つ年上の太田選手。先輩後輩でありながら試合ではライバル心をむき出しにしてぶつかる。文田選手が代表になれば太田選手が心から応援する。素敵な関係です。
 上半身だけで戦うグレコローマンでは投げ技が華です。何万回、何十万回も練習で繰り返してきた反り投げ。家族や太田選手の思いを胸に豪快なアーチで世界を驚かせてほしいです。(加藤 綾子)

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