【荒磯親方 初場所総括】徳勝龍&正代、自分の「形」見事 千秋楽最高の一番

[ 2020年1月28日 06:30 ]

初場所を沸かせた徳勝龍(上)荒磯親方はその内容を絶賛した(撮影・村上 大輔)
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 大相撲初場所は両横綱が途中休場する中、幕尻の徳勝龍(33=木瀬部屋)が初優勝を果たした。新関脇の朝乃山(25=高砂部屋)は終盤に粘って10勝を挙げ、春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)での大関獲りにつなげた。大関・豪栄道(33=境川部屋)は陥落が決まって引退を決断し、高安(29=田子ノ浦部屋)は1場所での大関返り咲きを逃した。スポニチ本紙評論家の荒磯親方(元横綱・稀勢の里)が大荒れとなった場所を総括した。

 早々に横綱不在となり、どうなることかと心配しましたが、終わってみればいつもより盛り上がったいい場所になりました。ハラハラドキドキ、結果の分からない相撲は見ていて楽しい。相撲の奥深さが出た場所でした。

 幕尻優勝の徳勝龍は内容的にも素晴らしいものがありました。左を差すときに固めて一つになり、入った瞬間に爆発させていました。千秋楽の貴景勝戦はその集大成でした。5日連続の突き落としも全て圧をかけているから決まりました。地に足がついていて、足に根っこが生えているような相撲でした。来場所、上位相手に同じような相撲が取れれば非常に楽しみです。

 徳勝龍とは8年ほど前から場所が終わると食事を共にするのが恒例で、今場所も千秋楽の夜に会いました。以前は相撲の話をすることはなかったのですが、昨年秋場所からは相撲のことも話すようになりました。相撲の基本は頭をつけたり背中を丸めたりと思われがちですが、徳勝龍のように体が反っていて腹が出ているお相撲さんはそれをやっても駄目。私が寄るときにするのは、最後は腰を入れて腹を出すことでした。それが一番効くというような話をしたことがあります。今場所の徳勝龍は特性をよく理解して相撲を取っていました。

 正代は優勝を逃しましたが13勝は立派です。私が初めて平幕で13勝を挙げた09年夏場所、先代の親方(元横綱・隆の里)が千秋楽パーティーのお客さんの前で「弟子を褒めることをあまりしたくないのですが、13勝は優勝の目、13勝は立派です」と話したことがありました。横綱はおそらく13勝を目指してやっているのだなと、そこで初めて思いました。正代は優勝決定戦がなくなり天を仰いで悔しそうにしていましたが、胸を張っていい成績です。

 正代の相撲で目立ったのは、相手の力が出なくなる相撲を取っていたということ。前に前に手が出て、右で手の甲を返しながら左のはずに入れていました。そうなれば相手は出るすべがなくなります。もがけばもがくほど下に入り込まれ、正代アリ地獄という感じでした。優勝の可能性を残していた千秋楽の御嶽海戦も、実力者に一直線で勝ったことは自信にすべきです。

 朝乃山のここ一番の強さにはスター性を感じました。10勝に届かなければ大関獲りがやり直しという状況で4連勝したのは素晴らしい。14日目の貴景勝戦は不利な体勢で上から抱え込んで左上手を取り、1回で駄目だと思ったら2回目に振り回し、小さい力士がやられるのが一番嫌な相撲を取りました。栃ノ心には左上手を取りながら敗れましたが、それも彼の味です。修正点はたくさんあり、だからこそ今後に期待できる魅力があります。

 大関返り咲きを逃した高安は、この結果を自分でどう思うかでしょう。過去のいい思い出が邪魔して、過去の積み重ねが逆に自分の動きを制限したりすることがありますが、彼はその典型です。いいと思ったことを全て忘れて、何が自分に一番合っているかを考えるべきです。白鵬はこれまでと同じ立ち合いでは勝てないと思えば、張り差しにいったり、かち上げにいったりします。自分のことを一番理解しているから、そういうことができるのです。高安はそこで、いい時のイメージのかち上げなどをやり続けてしまっています。

 高安が気持ちいい立ち合いだと思っても、相手はもっと気持ちいいということもあります。自分十分、相手十二分です。そうではなく、自分十分、相手が五分ぐらいしか出せないようなことを考えていかなければなりません。相手は何が苦手か、何を嫌がっているか、どうしたら力が出るかということを探っていくべきでしょう。(元横綱・稀勢の里)

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