日本 東京五輪“現実的目標”は金30個 お家芸苦戦も新種目あり混合あり…いける!!

[ 2019年9月28日 09:30 ]

男子バドミントンの桃田
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 日本オリンピック委員会(JOC)は2020年東京五輪で金メダル30個の目標を掲げている。過去最高の16個だった1964年東京五輪と2004年アテネ五輪の2倍近い数字であり、柔道や女子レスリングなど日本の“お家芸”で苦戦が目立つ中、果たして目標は達成できるのか。五輪開幕まで300日の時点で、30個の金メダルを予想してみた。(スポーツ部専門委員 中出 健太郎)

 体操の内村航平や競泳の萩野公介ら、これまで日本を引っ張ってきた選手が苦闘を続けている。五輪を前に海外勢が実力を伸ばし、柔道は今夏の世界選手権で金メダルが前年から3減の4個に、女子レスリングも1年前の金4個から1個に減った。「東京で金30個」は厳しいように思えるが、金メダルを狙える種目は十分にあり、現実的な目標と言える。

 (1)盤石 現時点で金メダル最有力はバドミントン男子シングルスの桃田賢斗。今季は世界選手権2連覇以外にワールドツアーで5勝を挙げ、世界ランク1位を独走する。柔道では男子73キロ級の大野将平が世界選手権で圧倒的な強さを見せ、五輪2連覇に死角は見当たらない。女子52キロ級の阿部詩も2年連続世界女王で、東京のヒロイン候補。女子レスリングでは、伊調馨との代表争いに勝った川井梨紗子がリオ五輪から全て異なる階級(63キロ、60キロ、59キロ、57キロ級)で4年連続世界一と抜群の安定感を誇る。

 世界ランク1~3位を日本勢が占めるバドミントン女子ダブルスは、五輪出場の国内2枠を巡る戦いが金メダル争いそのもの。東京五輪選考レースを対象にしたランキングでは世界選手権V2のナガマツ(永原和可那・松本麻佑組)が一番下の世界3位で、1位はフクヒロ(福島由紀・広田彩花組)、2位はリオ五輪金のタカマツ(高橋礼華・松友美佐紀組)。どのペアが出場しても、決勝へ勝ち上がる可能性が高い。

 (2)新種目 東京五輪から採用された新種目も順調に結果を出しており、金メダルラッシュが期待できる。空手では、男子形で世界選手権3連覇中の喜友名諒が今季プレミアリーグでも5戦全勝と“無双状態”。プレミア東京大会を制した女子形の清水希容との「ダブル金」を目指す。男子75キロ級の西村拳や女子61キロ超級の植草歩が活躍する組手次第では、さらに金の数は増す。

 スケートボードでは女子パークで13歳の岡本碧優(みすぐ)が男子並みの高さを武器に国際大会で勝ち続けており、東京では14歳1カ月での金メダル獲得が濃厚。男子ストリートの堀米雄斗は世界最高峰リーグに参戦中の20歳で、こちらも有力な優勝候補だ。スポーツクライミングでは、男子の楢崎智亜が8月の世界選手権でボルダリングと五輪種目の複合で2冠に輝き、本番へと弾みをつけた。サーフィン男子のエース五十嵐カノアも頂点を狙える存在で、新種目だけでも2桁近い金メダルの獲得も考えられる。

 (3)混合 日本勢にとって狙い目なのが、男女による混合種目だ。東京大会から新種目となった柔道の混合団体は男子と女子各3人の6人で争われ、日本は世界選手権3連覇中。選手層の厚さで他国を圧倒しており、東京でも金メダル確実とされる。同じく東京大会から採用される卓球の混合ダブルスでは、吉村・石川組が世界選手権で金、銀と2大会連続でメダルを獲得しているが、男子選手とも互角に打ち合える伊藤美誠がポイントになりそう。左利きの水谷隼とのペアで8月にワールドツアー初優勝をマークしており、五輪でも期待が高まる。

 バドミントンでは混合ダブルスの渡辺勇大・東野有紗組が8月の世界選手権で日本勢初となる銅メダルを獲得し、東京での金を射程圏に入れた。予選の得点最上位2人でペアを組むアーチェリーの混合団体も東京が初採用で、ロンドン五輪男子個人銀メダルの古川高晴が杉本智美と組んだ昨年のアジア大会で優勝。杉本も今年のW杯で2度の表彰台と力をつけている。競技が行われるのは大会2日目の来年7月25日。金なら日本選手団の第1号になりそうだ。

 (4)巻き返し 他の金メダル候補としては競泳世界選手権2冠の瀬戸大也、母国で勢いに乗りそうなテニス女子の大坂なおみ、上野由岐子を擁するソフトボールなどが挙がるが、今年は予想外の成績に終わった元世界王者たちの逆襲にも期待したい。柔道男子60キロ級の高藤直寿、同女子70キロ級の新井千鶴、レスリング女子50キロ級の須崎優衣らだ。世界選手権代表入りを逃した体操の内村も、本番では種目別の鉄棒で一発逆転が可能とみる。多少当たり外れがあるかもしれないが、最後は8月8日、野球の稲葉ジャパンが30個目の金メダル獲得で締めくくる、と予想する。

 <64年東京&04年アテネの16個が最高>日本は16年リオデジャネイロ五輪では金メダル12個で全体の6位。16個の64年東京五輪は3位、04年アテネ五輪は5位だった。過去3大会の金メダル獲得数1、2位を見ると08年北京五輪は中国51個、米国36個、12年ロンドン五輪は米国46個、中国38個、16年リオ五輪は米国46個、英国27個。20年東京で30個を獲得すれば、史上最高の2位以上に躍進する可能性がある。

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