客観的に見た八村の現在位置 レナードに追いつけるか?

[ 2019年6月21日 11:50 ]

ウィザーズに9番目で指名された八村(AP)
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 NBAの今ドラフトに関する予想を試みた多くのメディアは八村塁(21)を、ファイナルでMVPとなったラプターズのカワイ・レナード(27)と重ね合わせている。サイズは八村が2メートル3、106キロでレナードは2メートル、104キロ。サンディエゴ州立大出身のレナードは2011年ドラフトの全体15番目指名で、八村同様、トップ5で名前をコールされた超エリート組ではなかった。

 八村もそのあたりは意識しており「今、一番ホットな選手ですし、プレーをマネしたりもしました」とコメント。2人ともオフェンスだけでなく、フィジカルの強さを生かしてディフェンスでも力量を発揮するタイプ。ジャンプシュートを放った際、上体がまったくぶれず、低めのループでリングを狙うあたりも酷似しているとされていた。

 レナードは8季目の今季にスパーズからラプターズに移籍。プレーオフに入って底力をフルに発揮し、ポストシーズンでは24試合で平均30・5得点をたたき出してラプターズの初優勝に貢献した。今季年俸は2311万ドル(約25億円)で、八村にとっては理想的な“目標”かもしれない。

 個々の分析も数多く試みられているが、スポーツ専門局のESPNでは八村の長所は大きく分けて3つあった。

 (1)まず2メートル3、106キロというサイズが、ほぼ完成された肉体で形成されていること。コンタクトに強いため相手の反則を誘いやすく、今季はフル出場の40分換算(NBAは48分)で1試合平均7・9本のフリースローをもらっていた計算で、リングの上での勝負にも耐えられるとしている。

 (2)次に得点パターンが多いこと。サイズとパワーを生かしてポストから瞬時にシュートまで持っていけるスキルがあるだけでなく、マークしている選手のサイズが自分よりも大きくても攻撃可能。さらにドリブルしてからのジャンプシュート(プルアップ・ジャンパー)を打てるところにも焦点を当てていた。

 (3)最後は将来性と情熱。年齢は21歳でドラフト指名選手としては決して若くはないが、競技歴は浅く、まだ伸びしろを残していること。さらに練習熱心でそれが選手としての技量アップにつながる可能性があるとしている。

 一方、ESPNは弱点もきっちり指摘している。

 (1)最初は試合に臨んだ際の一種の“不透明感”とも言える部分で、ゴンザガ大の3年間ではいずれもアシスト数よりもターンオーバー数が多かったことを挙げている。つまり自分がスコアラーではなくゲームメーカーとしての立場に回った場合「チームメートを生かしている回数よりもシュートに至るまでにミスを犯しているケースが多かったことは課題」と指摘。またボールを保持しているときに頭を下げるクセがあり、再三にわたってフリーになっているチームメートを見逃していることも問題視していた。

 (2)次は3点シュート。NBAでは3点シュートを打つ本数がどのチームも急増しており、フォワードやセンターといったサイズの大きな選手であってもアウトサイドからの“長距離砲”を要求される時代。八村は3点シュートで今季41・7%というハイアベレージを残しているが、37試合で放ったのは36本(成功15本)しかなく、本数を重ねた場合にこのアベレージがどうなるのかが懸念材料として挙げられた。またジャンプシュートでのボールの軌道が低いのも難点だと指摘。ループが低いとNBAではブロックショットの“網”にもかかりやすいため、ここは改善すべき部分だとしている。

 (3)最後はディフェンス。サイズに恵まれている一方で、ディフェンダーとなった場合には姿勢が高く、自分よりサイズの小さい選手をマークするとかなり苦しんでいたと記されている。ボールを持っていないときの判断にも“キレ”がなく、今季のスティール数は37試合で35と目立たない数値。カレッジ以上にタフなディフェンスを要求されるNBAではまだ多くの課題が残されているようだ。

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