規制された五輪壮行会は正しい五輪ムーブメントの形なのか?

[ 2018年2月5日 12:50 ]

1月24日に行われた平昌冬季五輪壮行会で、目の前で歌うAIを見てうれしそうな高梨(前列左)と小平(前列左から2人目)
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 もうすぐ4年に1度の祭典が始まる。選手の周辺の人たちを取材していると、「みなさんどうしてます?」とよく尋ねられた。みんな何を知りたいのかというと、壮行会のやり方についてだった。

 宣伝目的での五輪の利用を禁じた国際オリンピック委員会(IOC)の五輪憲章に基づき、日本オリンピック委員会(JOC)は壮行会の指針を示している。IOCスポンサーと東京五輪スポンサーに加え、競技団体と自治体による壮行会は公開を認める。それ以外の企業や学校は、こじんまりやってくださいと言わんばかりに内部関係者のみの参加で非公開としている。

 4年前のソチ五輪前はこんなお触れは全く聞かれなかった。リオ五輪前から突然締め付けが厳しくなったのは、20年東京五輪開催決定の影響である。JOCは「スポンサーの協賛金があるから五輪が開催され、選手強化費の原資にもなる」と理解を求めるが、それで選手のキャリア全てがまかなわれているわけでもない。

 ほとんどの関係者にとって五輪壮行会の開催は初めての経験である。何かあって選手に迷惑をかけてはいけないと中止や非公開といった自粛ムードは広まり、式当日に公開中止を決めたところまであった。では実際にはどんな不利益が生じるのだろう。JOCは五輪憲章への違反による出場資格の剥奪を挙げたが、これはあくまで「最悪の場合」だという。

 素晴らしい前例がある。リオ五輪前、日本選手団主将を務める吉田沙保里の個人壮行会が、都内のホテルに約1000人を集めて盛大に行われた。各界から著名人が出席し、メディアにも大々的に公開された。それだけやっても、何かおとがめがあったという話は聞かない。さすがは国民栄誉賞アスリート。後進のために、これぐらい大丈夫と線引きしてくれたわけである。

 平昌に向け、先月24日にJOCは都内で小学生を多数動員して壮行会を開いたが、海外転戦中の選手も多く欠場者が目立った。大きな石を投げ入れても池の水面は1度揺れておしまいである。小さな雨粒が無数に降り注ぎ、次から次へと波紋を広げていくことで大きなうねりはうまれる。

 小さな壮行会も地元や全国、テレビや新聞、インターネットなど各種メディアに取り上げられることで、選手や出席者たちが五輪の価値を再確認する機会になるだろう。オリンピック・ムーブメントとはお仕着せではなく、まさにそうやって広まっていくべきものではないだろうか。

 過度な自粛ムードは不要。選手を応援する皆さん、壮行会は少し気兼ねしたかもしれませんが、期間中の応援イベントや報告会はぜひともにぎにぎしくお願いします。 (雨宮 圭吾)

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2018年2月5日のニュース