明暗分けたスーパーボウルのスペシャルプレー 笑ったのはイーグルス

[ 2018年2月5日 17:36 ]

ハイタッチを交わすイーグルスのピダーソン監督とフォールズ(AP)
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 第52回スーパーボウルではペイトリオッツとイーグルスが試みた同じような「スペシャルプレー」の成否が勝敗に直結。ペイトリオッツは失敗し、イーグルスは成功させて試合の流れを変えた。

 最初に意表をついたのはペイトリオッツ。第2Qの3分すぎ、敵陣35ヤード地点で迎えた「第4ダウン、残り5ヤード」でギャンブルに出た。FGを狙わずにプレーを続行。ここでQBトム・ブレイディー(40歳)はRBジェームズ・ホワイト(26歳)にハンドオフ。そのホワイトはすぐにロールアウトしてきたWRダニー・アメンドーラ(32歳)にボールを渡し、そのアメンドーラが前方を走るブレイディーにパスを投げた。ブレイディーがレシーブに成功したのはデビュー以来、18シーズンで過去2回のみ。その経験不足?が影響して、惜しくもボールはキャッチできなかった。

 直後のドライブでイーグルスは昨季までペイトリオッツに在籍していたRBルギャレット・ブラント(31歳)が21ヤードのTDランにつなげており、ペイトリオッツの作戦は完全に裏目になった。

 一方、イーグルスは第2Qの残り34秒、敵陣ゴールラインまであと1ヤードと迫ったところで“スペシャル返し”を敢行。QBニック・フォールズ(29歳)がオーディブル(作戦変更)の指示をオフェンス・ラインに伝えようとしている間にダイレクトスナップからRBコーリー・クレメント(23歳)が動き出し、すぐに左のタイトエンド(TE)に入っていたトレイ・バートン(26歳)にヒッチ。そのバートンがエンドゾーン右隅に何食わぬ顔で入り込んでいたフォールズにパスを通して22―12と引き離した。

 高校時代にQBだったバートンのパスはどんぴしゃ。「ゴーサインを出した監督の意気込みを感じたよ。みんなはニック(フォールズ)の運動能力をわかっていない。たとえカバーされていても彼はなんとかして捕ってくれたと思う」と“フィリー・スペシャル”の出来栄えに納得の表情を浮かべていた。

 スーパーボウル史上、「レシーブでTDを記録した最初のQB」となったフォールズも「ダグ(ピダーソン監督)と意見は一致していた。1カ月間、ずっと練習していたからね。完ぺきに遂行できたよ」としてやったりの表情。裏の裏?をかいた作戦が、試合の流れを変える結果となった。

 2季目を迎えていたダグ・ピダーソン監督(50歳)は就任時、「他に人材はいないのか?」「イーグルスには不向きだ」と地元のファンに嫌われていた。昨季7勝9敗に終わったときには「あまりにも無茶をしすぎる」とメディアにも批判された。

 しかしレギュラーシーズンを13勝3敗で乗り切った今季はその強気の策が“吉”と出た。スーパーボウルでは第4Qに33―32と逆転されたが、その後のドライブでは自陣45ヤード地点での「第4ダウン、残り1ヤード」をパントではなくTEザック・アーツ(27歳)へのパス成功でピンチを脱出。最後はそのアーツにフォールズが11ヤードのTDパスを通して、再び試合をひっくり返した。

 「最後まで選手にはアグレッシブでいてほしかった」と指揮官は笑顔。シーズン途中でドルフィンズから移籍してきたRBジェイ・アジャイ(24歳)は「このチームは絶対にあきらめない。最初から最後まで積極的だった」と語っており、イーグルスは「スーパーボウル史上、最も果敢に攻めたチームのひとつ」として歴史に名を刻むことになるだろう。

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