棺に昇進時用の新調紋付き…稀勢の里手向けの大関獲りへ

[ 2011年11月12日 06:00 ]

鳴戸親方の告別式で霊きゅう車に手を合わせて見送る稀勢の里

 九州場所(13日初日、福岡国際センター)の取組編成会議が11日に行われ、大関獲りを目指す稀勢の里(25=鳴戸部屋)は、初日に旭天鵬、2日目に阿覧と対戦することが決まった。この日は急性呼吸不全で急死した師匠の故鳴戸親方(元横綱・隆の里、本名・高谷俊英)の葬儀・告別式が、千葉・松戸市内で営まれ、放駒理事長(元大関・魁傑)らとともに参列。亡き師匠へ手向けとなる昇進の決意を胸に秘めた。

 冷たい雨が降り続く中、師匠・故鳴戸親方の遺体を乗せた霊柩(れいきゅう)車が、ハネ太鼓に送られ斎場を出て行く。稀勢の里は、新師匠の鳴戸親方(元幕内・隆の鶴)、兄弟子の幕内・若の里らとともに両手を合わせ、大粒の涙を流しながらその姿を見送った。

 7日に師匠が急死してから4日。精神的ショックに加え通夜、葬儀の対応に追われ十分な稽古もできないまま、慌ただしい日々を過ごした。しかし、告別式が終わったことで一つの区切りはついた。稀勢の里は告別式後も、この日午後11時前に福岡市内の宿舎に戻った際も報道陣には対応しなかったが、参列した父・萩原貞彦さん(65)が「出棺の時は寛(稀勢の里)も含め、みんな泣いていた。でも、きのうまでと比べると、表情は引き締まっていたような気がした。みんなのために自分が頑張らなければならないと思えるようになったのかもしれません」とその胸中を代弁した。

 大関獲りに挑む本場所序盤の取組も決まった。初日は西前頭2枚目の旭天鵬(大島部屋)、2日目は東前頭3枚目の阿覧(三保ケ関部屋)が相手だ。対戦成績9勝9敗の旭天鵬は懐の深い難敵、阿覧には5勝3敗と勝ち越しているが、馬力があり楽な相手ではない。今場所11勝以上を挙げれば昇進の目安の3場所合計33勝に届くが、序盤で取りこぼすとリズムを崩す可能性もあり、初日、2日目をいかに乗り切るかが勝負の分かれ目になる。

 故鳴戸親方の棺には、九州場所後の大関伝達式に備えて、師匠が新調した紋付き羽織はかまが入れられた。「稀勢を大関にすることが私の使命」と自分の昇進を夢見ていた亡き師匠の熱い思いに応えるためにも、もう涙は見せない。

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2011年11月12日のニュース