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【コラム】金子達仁

自力で局面を打開できる カタールは危険な相手

[ 2019年2月1日 05:30 ]

ランニングする塩谷(中央)ら日本代表イレブン(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

 決勝の相手がカタールに決まったとき、思わずほくそ笑んでしまったのはわたしだけだろうか。

 いうまでもなく、カタールは次回W杯の開催国。となれば、プレW杯として行われるコンフェデ杯には開催国枠として出場するはず。仮に、万が一金曜日の決勝で日本が敗れるようなことがあったとしても、アジア王者枠は日本のものになるのではないか。そんな皮算用をしてしまったのだ。

 ところが、そうは問屋が卸さなかった……というか、不勉強にも程があるというか、わたしの与(あずか)り知らないうちに、コンフェデ杯は廃止の方向で話が進んでいたらしい。

 確かに、日本が出ようが出まいが必ず見てきたW杯と違い、コンフェデ杯は日本が出場を逃した時点で大幅に関心を失っていた自分がいた。大会廃止の理由はファンやスポンサーの支持を得られなかったことにあるというが、なるほど、納得である。

 コンフェデ杯出場という“副賞”がなくなった以上、優勝以外にアジアカップの価値はなくなってしまったわけだが、決勝で待ち受けるカタールは、相当に危険な相手である。

 準決勝で戦ったイランは、数字の上では破壊的な攻撃力を発揮していたが、その得点の多くは、相手のミスに乗じてのものだった。もちろん、サッカーにミスはつきものであり、そこにターゲットを絞るサッカーが間違っているわけではない。ただし、その代償として、W杯本大会でのイランは1次リーグの壁をどうしても突破できずにいる。アジアでならば生じる次元のミスを、欧州や南米のチームはまず犯してくれないからだ。

 カタールは違う。自力で局面を打開し、自分たちの力で決定機を作り出す力が彼らにはある。そして、前線で待ち受けるアルモエズ・アリは、文句なしに今大会No・1のストライカーである。消えている時間も長い選手だが、純粋に点を取る能力に関しては、大迫より上かもしれない。

 おそらく、試合の主導権は日本が握ることになるし、それはカタールも覚悟していることだろう。開催国UAEとカタールの国交が断絶していることを考えると、スタンドの空気が日本寄りになることも予想される。

 ただ、そのUAEとの直接対決に圧勝して勝ち上がってきた彼らからすると、その程度の“アウェー感”など可愛いものだろう。しっかりと守りを固め、抜け目なく蠍(さそり)の一刺しを見舞う機会をうかがってくるはずだ。日本の守備陣は、イラン戦以上に神経を張りつめていなければなるまい。

 決勝トーナメントに入り、明らかに熟成の度合いを高めてきている吉田&冨安のCBコンビだが、アリを止めるのは簡単なことではない。日本としては、最終ラインで彼を止めるのではなく、その前の段階でホットラインを遮断し、試合から消してしまうのが望ましい。そういった意味からすると、鍵を握るのはボランチになってくるかもしれない。

 相手の最大の武器を完全に封じた上で、南野に待望の大会初ゴールが生まれる……というのが、アテにならないわたしの皮算用なのだが、さて。(金子達仁氏=スポーツライター)

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