【コラム】金子達仁

ミスでナイーブに…動じない精神力求めたい

[ 2019年1月31日 20:00 ]

<日本・イラン>後半、大迫ゴールで先制(撮影・小海途 良幹)
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 物足りない。まったくもって、物足りない。申し訳ないが、この程度の結果と内容に合格点をつける気にはとてもなれない。

 せいぜい、及第点である。

 もしこの試合が昨年のウルグアイ戦の直後に行われていたとしたら、印象はまったく違ったものになっていただろう。滑らかさは失われ、チャンスの数も激減した。きっと、そう感じていたはずだ。

 公式戦は結果がすべて?なるほど、そうかもしれない。「強いチームが勝つわけではない。勝ったチームが強いのだ」とはよく言われる言葉である。だが、忘れてはいけない。確かに強いチームが勝つわけではないが、勝つ確率は強いチームの方が高い。内容で勝ったチームが勝つわけではないが、勝つ確率は内容で勝ったチームの方が高い。

 今回、スコアの上ではイランを圧倒した日本だが、その中身はといえばほぼ互角、見方によってはイランがやや押し気味、とも取れる内容だった。日本のポテンシャルを信じる者としては、そこに不満が残る。

 試合の入り方は、ほぼ完璧だったといっていい。中でも感心させられたのは吉田の知的なリーダーシップだった。最初のプレーでロングパスを選択した彼は、しかしその後、徹底してボール保持にこだわった。おそらく、立ち上がりだけは安全を重視し、時間の経過とともにやり方を切り替えていくことを意識していたのだろう。キャプテンが明確な姿勢を示したことで、チームの方向も定まった。中盤の選手がうまく絡んだことで、日本は完全にリズムをつかみかけた。

 だが、それを壊してしまったのが、GK権田のフィードミスだった。いや、彼のミスを責めるつもりはない。ポゼッションを重視するチームであれば、ああしたことは時折起きる。わたしが残念だったのは、ミスから決定機を与えてしまった後、権田だけでなくチーム全体が浮足立ち、それまでやっていたサッカーを見失いかけたことにある。

 相手の超絶技巧やスピード、パワーにやられたわけではない。きっかけはあくまで自分たちのミス。中国戦がそうだったように、イランの攻撃は相手のミスを前提としているところがあり、そのことは、日本の選手たちも気づいているはずの時間帯だった。

 だが、たった一度の決定機で、日本の選手たちはイランに対する警戒心を必要以上に発動させてしまった。

 一言でいえば、ナイーブにすぎた――ほんの数年前の大坂なおみのように。

 本田、香川、岡崎。長く日本を牽引(けんいん)してきたいわゆる“ビッグ3”が今回のチームにはいない。にもかかわらず、彼らの不在を嘆く声がまるで聞こえてこないのは、チームの新陳代謝が極めてうまく進んでいることの表れでもある。新体制になってまだ半年の段階で、王者の風格や動じないメンタリティーを求めるのは、2年前の大坂に全米や全豪での優勝を求めるようなものかもしれない。

 だが、目標とは、求めずして、求められずにしてたどりつけるものではない。

 日本には、まだまだ余力と伸びしろがある。決勝戦では、迷わず合格点をつけられるような試合がみたい。(金子達仁氏=スポーツライター)

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