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【コラム】金子達仁

世界で勝つため日本代表は次の段階へ

[ 2018年10月25日 21:25 ]

<日本・ウルグアイ>前半、ゴールを決めた大迫を祝福する中島(右)(撮影・西尾 大助)
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 結構、というか、生まれてこのかたなかったぐらい、聞かれている。幼稚園のパパ友から。行きつけの歯医者さんの先生から。基本的には海外のサッカーにしか興味のない友人から。

 「新しい日本代表、すごくないっすか?」

 これがW杯の前であれば、まだわかる。個人的には「すごくないっすか?」と聞かれた経験はないのだが、日本代表に対する関心が高まっていると実感する機会は多々あった。

 だが、いまはW杯イヤーの秋。通例からすると、日本社会のサッカー熱が4年で一番落ち込んでいる時期である。ほとんどの人にとって、次のW杯はまだ遠い未来のお話。この時期の日本代表がどうなっていようが、関心のない人が多いのだろう。

 そう考えると、森保体制になってからの日本代表は、コアなファンが感じている以上のインパクトを世間に対して与えているのかもしれない。まだ先は長いが、滑り出しとしては歴代最高とも言える。

 何より大きいのが、日本社会全体から、世界というものに対するコンプレックスが急速に薄れつつあるということだろう。以前は日本人であるということがそのまま勝てない理由になっていた競技で、今年もまた日本人は新たなタイトルを獲得した。2年後には地元五輪も開催される。世界で勝つことを悲願や夢ではなく、現実的な目標として捉えられる日本人はもっともっと増えていく。

 日本のサッカーの目標も、「世界と戦う」ではなく「世界で勝つ」に変わっていく。

 目指すところが変わっていけば、目指す方法も変えていく必要がある。いままでよりも高い経験値が得られる場をくぐり抜けておく必要がある。W杯ロシア大会でのコロンビア戦のように、勝つことで「俺たちは強い!」と心の底から実感できるような勝負である。W杯で強敵と対峙(たいじ)した際、自信を裏付けてくれるような経験である。

 南米選手権への参加は、もちろん貴重な経験の場となるだろう。だが、贅沢(ぜいたく)を言わせてもらえば、まだ足りない。これからの日本代表が目指していく高みを考えれば、それだけで満足するわけにはいかない。というのも、開催国との対戦以外は、ホームではないものの、アウェーでもないからである。

 どこの地域でもそうだが、南米の国々は特にホームで強い。熱狂的な声援の力は、W杯ロシア大会南米予選の最下位に終わったベネズエラでさえ、ホームではウルグアイ、アルゼンチン、コロンビア、ペルーに負けなかったことからもわかる。

 ここ4年間の日本代表の戦いを振り返ってみると、公式戦を除き、純粋なアウェーと言える試合は3試合しか行われていない。今年のスイス、昨年のベルギー、3年前のイランである。結果は、1分け2敗だった。

 国内での試合が興行として魅力的になってしまっている以上、海外での武者修行が難しいのはわかる。だが、今までどおりのやり方ではたどり着けない地点を、いまの日本代表は、日本人は目指そうとしている。マッチメークも、そろそろ次の段階へ進むべき時期である。(金子達仁氏=スポーツライター)

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