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好調名古屋支える“5割増し”レフティー前田

鳥栖戦でゴールを決めた名古屋のMF前田
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 以前、プロ野球OBの方にうかがって印象に残っている言葉がある。

 サウスポーは5キロ増し。

 左ピッチャーの投げる直球は、右投げの投手が投げるものよりも時速5キロほど速く感じられるのだという。つまり、サウスポーの投げる140キロは、右ピッチャーの145キロに相当するのだと。

 それが妙に腑(ふ)に落ちてしまったのは、わたしがサッカーにおける「レフティー」にも特別な価値を感じていたからである。以来、わたしの中には「サウスポーは5キロ増し」をもじった「レフティーは5割増し」という言葉が定着している。

 たとえばジーコとマラドーナ。創造性、芸術性という点ではほぼ互角だとわたしは思っている。得点力も大差なし。それでも世界的な評価で大差がついたのは、W杯を獲った、獲れなかったの違い以上に、利き足の問題が関係しているような気もする。左利きだったマラドーナは5割増し、と考えれば、納得もできる。

 なぜ左利きはトクなのか。言うまでもなく、その理由は希少性にある。統計によれば、民族や人種を問わず、左利きは総人口の10%の割合で生まれるのだとか。10人に1人しかいないマイノリティー。他の9人とは違う角度から繰り出されるプレーは、たとえ一瞬ではあっても、マジョリティーに混乱を生む。そして、その一瞬の積み重ねが、大きな差となって表れる…のだとわたしは思う。

 どういうわけか、かつての日本サッカーは極端に左利きの数が少なく、右利きの選手を無理やり左サイドに当てはめるチームが少なくなかったが、最近ではそんな傾向もなくなり、ほとんどのチームが複数の左利きを抱えるようになった。

 中でも極上レフティー2枚持ち、と言えるのがコンサドーレである。五輪代表の三好とタイ代表のチャナティップ。これだけ創造的な左利き2枚を揃(そろ)えているのは、Jリーグはもちろんのこと、世界的にみてもちょっと珍しい気がする。

 インドネシアでの三好にはいささか物足りなさもあるが、その分、チャナティップの輝きが凄い。もしわたしに投票権があるなら、間違いなくアジア最優秀選手として一票を入れる。小野伸二という本物の天才の薫陶を受けられる環境にあるのも、彼の今後を考えると大きい。

 ただ、ここにきてわたしの中で急速に存在感を増しているのが、名古屋のレフティー前田直輝である。前期泥沼に喘(あえ)いでいた名古屋はいま、伝説的な巻き返しの真っ最中だが、松本山雅からやってきたこの男の存在なくして、6連勝はありえなかった。J2からの補強選手がここまでチームを変えたというのも、わたしの記憶ではちょっとない。名古屋の今回の成功は、いわゆる「サマーマーケット」の重要性と、下部リーグの可能性を改めて知らしめることになるかもしれない。

 ちょっと残念なのは、チャナティップにしろ前田にしろ、それから名古屋の6連勝にしろ、他の国であれば大変な騒ぎになっていたはず。成熟してきたのは間違いないとしても、日本のサッカー界、まだまだです。(金子達仁氏=スポーツライター)

[ 2018年9月1日 08:00 ]

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