【コラム】金子達仁

「身の丈にあわない」超大物加入でJは変わる?

[ 2018年7月20日 06:00 ]

歓声に応える神戸MFイニエスタ(撮影・奥 調)
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 あらかじめ決まっていた日程とはいえ、あれほど盛り上がったW杯のあとだと、もう少し余韻を味わう時間が欲しかった気分になる。余韻。新たなる渇望。そして再開。せっかくイニエスタ、フェルナンド・トーレスというJの歴史上でも特上クラスにあたる助っ人が加入しただけに、今回の静かすぎる再開、ちょっともったいない。

 それにしても、ついこの間まで金科玉条のごとく「身の丈にあったチーム経営を!」とがなり続けてきたJリーグの豹変(ひょうへん)ぶりは嬉(うれ)しい誤算である。もちろん、Jリーグの中にも前例を踏襲していこうとする考えと、このままではいけない、現状を打破しなければと考えるグループは混在していたはずで、そのパワーバランスが、少しずつ崩れてきたということだろうか。

 選手やスタッフの給料が未払いになるような放漫経営は、むろん論外である。Jリーグが「身の丈」にこだわり続けたのは、欧州や南米で時折起きる“非常事態”を未然に防ぐため、という意味もあった。

 ただ、そこにこだわりすぎたあまり、リーグ全体から「興行」という発想が薄れてしまった。欧州の限られたビッグクラブがやっている、毎年のように大物を獲得してファンの期待を煽(あお)る、というやり方である。

 今年はユベントスがクリロナを獲得して大ニュースとなったが、こういうことをやるチームが、Jリーグからは絶滅してしまっていた。かつてのヴェルディのような存在が、久しく姿を消してしまっていた。

 だが、これからは様相が変わるかもしれない。

 イニエスタを獲得した神戸も、フェルナンド・トーレスを獲得した鳥栖も、いわゆる「オリジナル10」のメンバーではない。磐田や柏、C大阪のように旧日本サッカーリーグ時代からの伝統があり、J加入後にタイトルを獲得したわけでもない。

 そんなチームに、超大物がやってきた。およそ「身の丈」にあったとは思えない金額で、現役バリバリのスーパースターがやってきた。たった一人で勝てるほどサッカーもJリーグも甘いものではないが、しかし、彼らが勝つ日が訪れれば、Jの頂点に対する考え方が変わる。新参者であっても、主役になれることを多くのチームが知る。

 W杯におけるクロアチアの躍進が多くの小国、弱小国に勇気を与えたように、いまはJ2、J3で蠢(うごめ)いているチームの中に、本気でJ1制覇を目論(もくろ)むところが現れる。

 当然、名門チームも黙ったままでは困る。個人的に期待し、また発奮してもらわねば困ると考えているのはG大阪である。Jの中でトップクラスの素晴らしいスタジアムを手にしながら、彼らは器に見合った成績を残せていない。日本全国に専用スタジアムの有効性を知らしめるためにも、頑張ってもらわなければ。

 前日のスポーツ紙の紙面を飾ったのは、ZOZOタウン前沢社長の球界参入宣言だった。本来は閉ざされた世界のはずのプロ野球でさえ、新たな動きが起きようとしている。Jリーグがこのままでいいわけが、ない。(金子達仁氏=スポーツライター)

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