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史上最弱開催国の下馬評を履させたホームの利

W杯ベスト8敗退で落胆するロシア代表
Photo By AP

 スウェーデン対イングランド。恐ろしく退屈で、両国の国民でない人たちは睡魔との厳しい闘いを強いられたはずだが、ある意味、実にW杯らしい内容だったとも言える。

 以前、カー・オブ・ザ・イヤーの選考委員をやらせていただいた時に痛感したのは、「クルマには国民性が表れる=サッカーと似ている」ということだった。

 すべての面で完成度が高く、多くの人から世界最高とされているドイツ車。ドイツ車に比べれば穴は多いものの、素晴らしく情熱的で、一点突破主義的魅力を持つイタリア車。アスファルトを制圧しようとするのがドイツ車だとしたら、接吻(せっぷん)しているかのようなフランス車。

 イブラヒモビッチのいないスウェーデンは、だから、まさにスウェーデン車だった。安全で、バランスがとれていて、スタイリッシュ。ただし、驚きはなし。一定数のファンはいるものの、熱狂的なマニアは少ない。

 一方で、イギリス車のエッセンスをまるで感じさせなかったのがイングランドだった。あえていうなら無国籍車。久しぶりの4強進出にメディアもファンも大騒ぎだろうが、ここまで無味無臭なチームだと「では優勝に賭けてみようか」という気にはなれない。何かが足りない。そう思えてならないのだ。

 ロシア対クロアチア。驚いた。ロシアが先制点をあげるとは。延長に入って逆転弾を許しても、追いついて見せるとは。アルゼンチンを粉砕したクロアチアと、こうもがっぷり四つに組んだ試合をやってのけるとは。

 かくも短期間に、チームとは変貌できるものなのか。

 わずか3週間前、彼らは8年前の南アフリカと同様の扱いを受けていた。史上最弱の開催国。そして、ほとんどの人が、ロシアも南アフリカと同じ道をたどるとみていた。つまり、1次リーグ敗退である。

 だが、初戦のサウジアラビア戦を圧勝したことで、彼らはそれまでになかったものを手にすることができた。自分たちはやれるという自信である。スペイン相手に120分を戦い抜いたことで、その厚みは世界レベルのものにまで化けた。

 正直、彼らが見せたサッカーの質に驚きはなかった。ただ、その不(ふ)撓(とう)不屈の精神と、失礼ながら予想に反する実にクリーンな戦いぶりは、世界中の人々が記憶に刻んだはずである。このベスト8を揶揄(やゆ)したり否定しようとする人は皆無だろう。

 そして何より、ホーム・アドバンテージという要素の何と大きなことか。

 戦うことで自信を進化させていったのは選手だが、そのスピードを加速させたのは観客の声援であり拍手だった。

 改めて思う。

 16年前、わたしは日本が優勝できるなどとは微塵(みじん)も考えていなかった。いくらホームでも、限界があるのだと端(はな)から決め込んでいた。

 だが、ロシアにできるのであれば――。

 いつかはきっと、日本で再びW杯が開催されるときが来る。そのときは、本気で優勝を期待しようと思う。ホームならばできる。日本ならばできる。そう信じることにしよう。

 陸上トラックのない専用競技場で。(金子達仁氏=スポーツライター)

[ 2018年7月10日 06:00 ]

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