【コラム】金子達仁

諦めなかった日本の姿は未来への贈り物

[ 2018年6月26日 12:10 ]

セネガル戦、乾(左から2人目)のゴールが決まり、喜ぶ日本代表
Photo By ゲッティ イメージズ

 FIFAの公式サイトが「コメディー」と評した川島の信じがたいミスから先制点を奪われた際、奈落の底に落ちていくような感覚を味わったのはわたしだけではあるまい。

 20年前の初出場から先週のコロンビア戦まで、日本は世界の強豪と18試合をW杯の舞台で戦ってきた。その内訳は5勝4分け9敗(PK戦は引き分けと数える)。思ったより悪くない、と感じる方がいるかもしれないが、日本があげた5勝は、すべて先制点を奪ってのものだった。

 日本が勝つためには先制するしかないことを、だから、多くの日本人は本能的に悟っていたはずである。過去のW杯で日本が先制を許した試合は「7」で、逆転した試合はゼロ。02年のベルギー戦で引き分けただけで、あとはことごとく敗れているからである。

 強敵コロンビアを下したことで、日本の選手たちが一段階段を上るであろうことは予想していた。6月19日以降の日本は、それまでの日本とは違う次元のチームになるとも思っていた。

 だが、まさかこれほど強くなっていようとは。

 歴史上一度もはね返したことのないビハインドを、彼らは2度にわたってはね返した。どんなチームにとっても途方もない衝撃になったであろう、試合終盤に入ってからの失点も、自分たちの力で帳消しにした。先達たちが一度もできなかったことを、グループ最強とも目されたセネガル相手にやってのけた。

 コロンビアに勝ったのは、それも内容で凌駕(りょうが)して勝ったのは、今後の日本サッカーに大きな影響を及ぼすはずだとわたしは思っていた。これが物心ついて初めて見るW杯だった少年たちにとって、南米は脅威でもブランドでもなくなるからである。それだけで、今回の日本代表は歴史的な責務を果たした、とも思った。

 だが、彼らはさらに未来への贈り物をしてくれた。

 ドイツが強いのは、どんな苦境に立たされても諦めないのは、プレーする選手たちが強いドイツ、諦めないドイツを原体験として持っているからである。

 ならば、近未来の日本代表選手たちは、先制をされても諦めなくなる。追いついたところを突き放されても、諦めなくなる。運動能力で圧倒されても、戦う術(すべ)はあると確信することができる。主導権争いを端(はな)から放棄し、守りまくった末の1勝では断じて得られない未来を描く権利を、ついに日本は獲得した。

 だが、まだ決勝トーナメント進出が決まったわけではない。

 最終戦の相手ポーランドは、すでに敗退が決まっているが、間違ってもそのことを好材料などと考えてはいけない。優勝争いのダークホースとまで見られていたチームのプライドは、決して小さなものではない。もはや取り返しのつかないほど大きなものを失ったことは知りつつも、せめて一矢を報いるべく、牙(きば)をむき出しにしてくるはずだ。

 驕(おご)ってはいけない。けれども、怯(ひる)んでもいけない。

 最大の警戒心を抱き、最高の敬意を払い、そのうえで、叩きつぶす。そんな日本を、28日はみたい。(金子達仁氏=スポーツライター)

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