初の父子J王者、横浜・水沼宏太手記 憧れて憎んで忘れて…でも父と同じエンブレム背負いプレーできて幸せ
明治安田生命J1最終節 横浜3-1神戸 ( 2022年11月5日 ノエスタ )
首位の横浜が逃げ切って、3年ぶり5度目の制覇を果たした。3得点全てに絡んだMF水沼宏太(32)はチームが初優勝した95年に引退した父の貴史氏(62)と、初の「父子Jリーグ優勝」を達成。今季、抜群のリーダーシップで7得点6アシストと活躍し、7月には日本代表に初選出された“遅咲きの男”が本紙に手記を寄せた。
優勝の瞬間は、何ともいえない感情がこみ上げてきました。F・マリノス創設30周年という節目の年で、父が最初にプレーし、息子の自分も同じエンブレムを背負いサッカーができる幸せを改めて感じます。ユニホームの名前を「KOTA」から「MIZUNUMA」に変えたのは、覚悟と責任を持ってやると決めたから。その思いだけで、必死に走り続けてきました。
中2だった2003年、マリノスの優勝を日産スタジアム(当時横浜国際)でジュニアユースの仲間と見て、やはり格好いいなと。しかも劇的な展開で、自分の中で大きなものになりました。そのチームを一度出てから戻ってきて、やっとここまで来たんだなという思いがあります。
憧れのマリノスでプロになれて、ここで活躍して日本代表になる夢を持っていました。でも現実はうまくいかず、思い描いたキャリアとは違う方向に進みました。その悔しさから、10年に栃木に移籍した時は「マリノスになんか絶対に帰ってくるものか」と本当に思ってました。12年にはルーマニアのクラブに移籍しようとしてうまくいかず、拾ってもらった鳥栖でのJ1初得点がマリノス戦。この時も「よっしゃ!取ってやった」と。
憧れではあったけれど、マリノスを特別意識することは徐々になくなりました。所属したクラブから良くしてもらい、居心地が良くなってきて。C大阪で17年度天皇杯決勝のマリノス戦で延長ゴールを決めた時も、正直何も感じませんでした。セレッソでとにかく優勝したいという気持ちだけでしたから。
どこでもできる自信がついたところで、19年オフにマリノスから声を掛けてもらった。連覇を目指すために必要だと言われて、今ならここで活躍できると考えて復帰を決断しました。昨季は結果も出ていた(9アシスト)中で、先発でなかなか出られなかった(先発1、途中35)。そこに他クラブから話がありました。かなり揺れ動いたけど、ここに戻ってきた2年前を思い出して。「まだやってないことがある」と、残留を決めました。
クラブの歴史を築いてきた先輩方には改めて感謝したい。その中には、1年目からプレーした父がいます。いつも気に掛けてくれていて、今も試合の前後には連絡しています。あとは2歳の娘の写真を送ったり。その時が一番テンションが上がってます(笑い)。
マリノスに関わる皆さんはもちろん、自分が所属したクラブにも感謝しています。でも一番はやはり家族。父と母、妹、そして妻と娘。いつも伸び伸びとサッカーができるのは本当に家族のおかげ。ありがとうという気持ちを最初に伝えたいですね。(横浜F・マリノスMF)
◇水沼 宏太(みずぬま・こうた)1990年(平2)2月22日生まれ、横浜市出身の32歳。横浜ユースから08年トップ昇格。10年J2栃木に移籍し、鳥栖、FC東京、C大阪を経て20年から再び横浜。J1通算344試合45得点。日本代表通算2試合0得点。1メートル76、72キロ。利き足は右。
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