菜七子“イチ流の思考”で成長 新記録の裏に精神的ゆとり

[ 2019年9月15日 05:30 ]

藤田菜七子 JRA女性最多勝利記録を更新 ( 2019年9月14日 )

<中山1R>デビルスダンサーでJRA女性騎手年間最多勝記録28を達成した藤田菜七子(撮影・西川祐介)
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 藤田菜七子の新記録の背景には騎乗技術の向上とともに、精神的なゆとりも見逃せない。

 「競馬は18頭出走しても17頭は負ける。だから、負けて悔しい思いをすることの方がずっと多いし、正直、後悔は毎レースあります」。失敗のスポーツという点で、騎手と野球の打者は似ている。日米通算4367安打を記録し、現役を引退したマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏も「僕の場合、8000回以上は悔しい思いをしているわけです」と語った。だからこそ、菜七子は敗戦と真摯(しんし)に向き合いながら、努めて引きずらないようにしているという。負けても競馬は面白い。その魅力を、菜七子は「レースは生き物。同じレースは二度とないところですね」。イチロー氏が引退会見で「野球は同じ瞬間がない、必ずどの瞬間も違うということ。これは飽きがこない」と語ったように、思考は同じだ。

 関係者によると、男性騎手に負けられないという気持ちが強すぎて、調整ルームで他人が近寄り難い雰囲気を醸し出していた時期もあったが、最近は表情も柔和になったという。「そういえば、師匠の根本康広調教師は現役時代、満面の笑みで“これがキツネ、これが犬”ってよく手影絵を披露してくれた。あんな騎手、後にも先にも根本さんだけだなぁ」と前記の関係者。いつの日か、菜七子が手影絵を伝承する日が来るかもしれない。

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2019年9月15日のニュース