365日 あの頃ヒット曲ランキング 1月

【1987年1月】雪國/吉幾三 紅白出場のための切り札 これでダメだったら…

[ 2012年1月26日 06:00 ]

★87年1月ランキング★
1 楽園のDoor/南野陽子
2 愚か者/近藤真彦
3 雪國/吉幾三
4 木枯しに抱かれて/小泉今日子
5 時の流れに身をまかせ/テレサ・テン
6 ホワイトラビットからのメッセージ/渡辺満里奈
7 WAKU WAKUさせて/中山美穂
8 ヴィーナス/長山洋子
9 約束/高井麻巳子
10 六本木純情派/荻野目洋子
注目TOO ADULT/渡辺美奈代
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【雪國/吉幾三】

 コミックソングじゃ認められない。だったら歌うか。そんな思いで演歌を歌って大ヒット。発売から1年経っても、レコードは売れ、ベストテン上位にランキングされた。

 青森出身の吉幾三の「雪國」は86年2月25日発売で、レコード売り上げ計60万枚を記録。有線放送でも絶好調で、東北を中心にリクエストが相次いだ。もともと栃木・那須温泉で宴会中にメロディーが浮かび、即興で作詞作曲したものだった。お遊びで作ったものだったが、後になって曲を気に入ったレコード会社のディレクターが絶賛。吹雪の中を走る奥羽本線の姿を見て歌詞を練り直した。

 9人兄弟の末っ子は、1969年(昭44)、歌手になりたくて家出同然で青森を後にした。作詞、作曲家の米山正夫氏に師事を受けたが、デビューは72年。山岡英二という芸名でなんとアイドル歌手だった。全く売れずにパチンコ店や喫茶店でバイトをする日々が続いたが、77年に吉幾三と改名し、ギターと木魚を使った、コミックソング「俺はぜったいプレスリー」が当たった。

 これでなんとか芸能界で生きていけるかも、という希望も突然忙しくなったことで皮肉にも過労でダウン。また低迷が始まった。息を吹き返したのが、それから8年後。85年に「俺ら東京さ行くだ」がレコード売り上げ40万枚を記録する大ヒットに。テレビのベストテン番組にも出演し、一気に顔が知れ渡った。

 歌手になった時、「いつかは紅白歌合戦に出たい」と大志を抱いていた。ようやくそのチャンスが巡ってきたと感じ、手応えも十分だった。しかし、大みそかにNHKホールの舞台に立てなかった。

 歌手と同時に作詞と作曲も手掛けていた吉は千昌夫の「津軽平野」やプロ野球巨人の中畑清が歌った「十和田丸」などを提供していた。その千に「演歌を歌わないと紅白に出られない」と訴えると、千は「コミックソングでやってきたんだからそれで行った方がいい」とたしなめられた。それでも吉は「これでダメだったら後は言うことを聞くから」と押し切って歌ったのが「雪國」だった。86年の紅白に初出場。それから16年連続出場を果たした。

 このヒットで地元青森に1億円と言われる「雪國御殿」を建てた。青森を離れて18年。文字通り故郷に錦を飾った。

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