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【1973年1月】そして神戸/内山田洋とクールファイブ 「神戸」は売れないの伝説打破

[ 2012年1月17日 06:00 ]

 ★73年1月ランキング★
1 女のみち/宮史郎とぴんからトリオ
2 喝采/ちあきなおみ
3 ふたりの日曜日/天地真理
4 小さな体験/郷ひろみ
5 そして神戸/内山田洋とクールファイブ
6 漁火恋唄/小柳ルミ子
7 じんじんさせて/山本リンダ
8 あなたが帰る時/三善英史
9 恨み節/梶芽衣子
10 あなたの灯/五木ひろし
注目おきざりにした悲しみは/よしだたくろう
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【そして神戸/内山田洋とクールファイブ】

 神戸を題材にした曲はヒットしない。芸能界にはいつの頃からかそんな噂が一人歩きしていた。それが事実だとすれば、九州出身の6人編成のコーラスグループ「内山田洋とクールファイブ」は、そのジンクスを破った先駆けだったといえる。

 リリースは72年11月。年末から翌73年にかけてヒットし、レコード売り上げは44万枚。浜圭介作曲のこの歌は日本レコード大賞では作曲賞を受賞。「長崎は今日も雨だった」で華々しいデビューを飾り、その後もヒット曲を連発しながら、独立問題やボーカルの前川清の離婚など、沈みがちだったグループが息を吹き返すきっかけとなった1曲だった。

 もともとクールファイブのために書かれた歌ではなかった。ある歌手が日本全国各地の地名ソングでアルバムを作るという企画が持ち上がり、浜と作詞家の千家和也のもとへ依頼がきた。浜の曲が先に出来上がり、あとは千家が神戸の地名を入れて歌詞を作るだけだった。

 神戸と言えば…と思いを巡らせた千家が頭に浮かんだのが、数年前に酒場で偶然相席した女性だった。水商売、もしかしたら春を売りながら生計を立てているかもしれないと思わせる女性だった。まだ30歳前後に見えたが、世間の酸いも甘いもかみ分けたその雰囲気を思い出し、出てきたフレーズが「神戸 泣いてどうなるのか」「誰かうまい 嘘のつける 相手捜すのよ」といった退廃的な、乾いた言葉だった。結局、出来ばえが良かったこの曲は、依頼された歌手のアルバムに提供せず、縁あってクールファイブが歌うことになった。

 「そして神戸」が再度クローズアップされたのが、発売から23年後の95年。1月17日に起きた阪神大震災の後だった。クールファイブから独立していた前川は、この歌を歌うことを自粛してきた。「泣いてどうなるのか」「捨てられたわが身が惨めになるだけ」…。悲観的な歌詞を口にするのははばかられる空気だった。

 ところが「歌ってくれ」と願い出たのは、被災した神戸の市民だった。「そして神戸は応援歌」とまで言い、大みそかの紅白歌合戦で歌ってほしいと10万人の署名まで集まった。「歌っている最中は、被災地で仮設住宅やテントで寒い思いをして聴いている人がいるかもしれないと思って、力いっぱい歌った。音がずれてもいい、とにかく力強くと思って…。終わった後は頭の中が真っ白になった」と紅白で熱唱した前川。長い紅白の歴史の中で忘れられない名シーンとなった。

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