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【1983年1月】さざんかの宿/大川栄策 “懐メロ”歌手から脱皮 15年目初のA面ヒット

[ 2012年1月9日 06:00 ]

 ★83年1月ランキング★
1 セカンド・ラブ/中森明菜
2 恋人も濡れる街角/中村雅俊
3 さざんかの宿/大川栄策
4 めだかの兄妹/わらべ
5 3年目の浮気/ヒロシ&キーボー
6 ミッドナイト・ステーション/近藤真彦
7 春なのに/柏原芳恵
8 冬のリヴィエラ/森進一
9 愛の中へ/渡辺徹
10 ラブ・シュプール/田原俊彦
注目ドラマテック・レイン/稲垣潤一
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。
 【さざんかの宿/大川栄策】

 「やっと心から惚れることの出来る女性に出会ったような感じだった」。デビュー15年目のベテラン歌手、大川栄策が吉岡治作詞、市川昭介作曲の「さざんかの宿」を歌うことになった時の第一印象がこれだった。

 「女心を歌い続けろ」。亡き師匠・古賀政男は大川に常々そう言っていたが、歌詞は切ない不倫の恋。この先どうなるか分からない、どちらかといえば明日がない男女を描いた歌は、市川の自信作のメロディーに乗ってジワジワ浸透。82年8月の発売ながら、晩秋から冬にかけてヒットした。

 「30万枚売れれば」と思っていた大川のささやかな願いをはるかに超えて、計140万枚の大ヒットに。オリコンチャートでは、最高2位だったが、83年の年間ランキングでは1位に。得意のタンス担ぎの芸を見せて、若い層にも親しみを感じさせるきっかけとなったTBS「ザ・ベストテン」では、最高3位。年間でも3位に輝いた。

 「マッチ(近藤真彦)、トシちゃん(田原俊彦)、聖子ちゃん(松田聖子)の出る番組に僕のような門外漢が出ていいものかとも思ったけど、みんな温かく迎えてくれた。彼らから刺激を受けた」と大川。83年には初の紅白歌合戦にも出場。この時ばかりは「古賀先生が生きているうちに出たかった」と目を潤ませていた。

 師匠と同じく福岡県大川市出身。芸名はその大川と、デビューした1969年(昭44)当時の首相だった佐藤栄作から拝借したものだった。高校卒業後、2年間内弟子として古賀家で庭掃除などの雑用をこなした。デビュー曲は古賀の作品で戦前の40年(昭15)に霧島昇が歌った「目ン無い千鳥」。リバイバル作品だった。しかも、兄弟子のアントニオ古賀が歌った「新妻鏡」のB面という扱い。レコードデビューしたものの、まだ半人前扱いだった。

 しかし、ヒットしたのはこのB面だった。ドラマの挿入歌だったことも手伝ったが、その後超が付くロングセラーになり、発売して10年目に計80万枚を突破した。

 それでもオリジナルのヒットがなかった大川。歌の上手さは芸能界でも指折りだっただけに“懐メロの大川”から脱皮出来たのが、この「さざんかの宿」だった。

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