365日 あの頃ヒット曲ランキング 1月

【1985年1月】つぐない/テレサ・テン 1年売れ続けた復帰第2弾が運命を変えた

[ 2012年1月3日 06:00 ]

★85年1月ランキング★
1 ユー・ガッタ・チャンス/吉川晃司
2 スターダスト・メモリー/小泉今日子
3 ジュリアに傷心/チェッカーズ
4 飾りじゃないのよ涙は/中森明菜
5 恋の予感/安全地帯
6 つぐない/テレサ・テン
7 男意ッ気/シブがき隊
8 娘よ/芦屋雁之助
9 ロンリー・カナリア/柏原芳恵
10 いっそセレナーデ/井上陽水
注目そして僕は途方に暮れる/大沢誉志幸
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【つぐない/テレサ・テン】
 発売から1年。それでもレコード売り上げは落ちずに、ベストテン内にとどまっていたのは、やはり受賞したのが大きかった。

 台湾出身の歌手テレサ・テンの「つぐない」は84年の日本有線大賞に輝き、年の瀬から年明けにかけてシングル盤が売れ続け、有線放送各局にはリクエストが集まった。2月には新曲も控えているのに勢いが衰えないことに「夢見たい。新曲出すのやめようかな」とテレサの口から冗談が出るほど。約3年のブランクを跳ね返し、日本での復活を遂げた記念すべきヒット曲となった。

 74年、アイドル歌手路線をデビュー曲だけで見切りをつけ、路線変更して売れたのが2曲目の「空港」。レコード大賞の新人賞も受賞した。ところが、その後は大きなヒットにも恵まれず、79年に偽造旅券事件に巻き込まれて、日本を強制退去させられた

 偽造旅券をなぜ買ったのかは、はっきりした理由がいまだにはっきりせず、事の真相は定かでないが、日本の芸能界の一線から退かざるをえなくなったテレサは米国留学したり、ロンドンでボイストレーニングを受けるなど雌伏の時を過ごした。

 事件のほとぼりもさめた83年にレコード会社を移籍し、復帰作をリリース。「空港」の時と同じ、2作目となる「つぐない」で火がついた。日陰の存在のけなげな女性を歌った切ないメロディーは、男性だけでなく女性の気持ちもつかんだ。続く「愛人」、86年の「時の流れに身をまかせ」という“不倫路線”も大ヒット。折りしも、世の中はカラオケブーム。比較的歌いやすい曲調に支持が集まり、3年連続で有線大賞受賞した。
 
 実際のテレサは歌のイメージとはかけ離れた、勝気な女性だったという。結婚願望は強かったものの「夫婦は対等。耐えて忍ぶ女性は私には合わない」。映画スター、ジャッキー・チェンとも恋人関係だったというが、恋多き女は一度も結婚しなかった。

 テレサが旅行先のタイ・チェンマイで気管支ぜんそくの発作による心不全で42歳の若さでこの世を去ったのは、95年5月。私生活では日本から離れ、フランスで年下のカメラマンと同棲していた。体力的にも自信をなくしていたようで、周囲に引退の考えを口にしていたともいう。

 生前は「実はスパイだった」という説もあり、その死因も含めてなぞの多い「アジアの歌姫」。台湾と中国の関係が緊迫していた時代でも、テレサの歌は中国大陸の人の心をとらえた。台湾のレコードやカセットテープを買うことが禁じられていた中で、中国では海賊版(盤)が出回ったが、売れた本数は何千万とも何億ともいわれた。政府要人も購入し、それが発覚して地位を剥奪されたという逸話もあるほどだ。

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