藤井8冠が学んだAI “進化形AI”は藤井に学ぶ “相手のミスに期待する手”打てる可能性も

[ 2023年10月23日 04:45 ]

11日、感想戦で対局を振り返る永瀬前王座(右)と藤井8冠
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 将棋の藤井聡太王将(21)=竜王、名人、王位、叡王、王座、棋王、棋聖含む8冠=が史上初の8冠達成に続いて、第44回JT杯でも昨年に続く2連覇に王手をかけた。どこまで進化するのか。その鍵を握る一つが人工知能(AI)だ。

 永瀬拓矢九段(31)を下した11日の王座戦第4局の終盤。日本将棋連盟が運営する棋譜中継のAI評価値では、藤井が122手目[後]5五銀を打った後0―100と敗色濃厚。だが、永瀬が123手目を打つと98―2と大逆転した。藤井の一手は打っただけでは逆転しないが、相手のミスを誘う手だった。永瀬はほぼ1つしかない正解を1分将棋で出す状況に追い込まれ、冷静さを失った。

 藤井の122手目は、AIの最善手とは異なっていた。AI専門メディア「AINOW」編集長の小澤健祐氏は「AIは内部で膨大なシミュレーションをして候補手を選ぶ」と指摘。これに対し「人間は相手のクセや体調など複数の情報源を活用し局面を認識する。その結果“焦ってミスをするかも”と予測して誘導もできる」と解説する。

 “運命の一手”は現状のAIでは導けなかったとみられる。ただ、小澤氏はテキストや画像、音声、動画など複合的な情報源を活用した「マルチモーダルAI」によって劣勢でも藤井のように逆転の一手を放てる可能性が出てくると語る。例えば、相手の心情をどのように理解するかAIに学習させた上で、顔認識カメラで対局相手の目の揺らぎや表情を分析。正確に心理状態を理解できるようになれば「“相手のミスに期待する手”を打てるAIになる可能性がある」と推察した。AIに新たな学習領域を示したとも言える。

 小澤氏は「AIが藤井8冠の棋譜などについて学習すれば、ご自身がさらに強くなる練習プランもできる」と語る。藤井とAIが切磋琢磨(せっさたくま)する未来も近そうだ。

 ≪チャットGPTを活用し新著執筆≫小澤氏は「人間とAIが共存する社会をつくる」をビジョンに生成AI活用推進プロジェクトを推進中。新著「生成AI導入の教科書」(ワン・パブリッシング)はチャットGPTをフル活用して執筆・編集した。

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