藤井5冠 タイトル最速10期王手、豊島九段下し王位戦3勝目 予想外封じ手に驚きも

[ 2022年8月26日 05:00 ]

豊島九段(左)に勝利した藤井王位(日本将棋連盟提供)
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 藤井聡太王位(20)=王将、竜王、叡王、棋聖含めて5冠=に豊島将之九段(32)が挑む第63期王位戦第4局は25日、徳島市の料亭「渭水園」で2日目が指し継がれ、藤井が95手で勝利した。対戦成績を3勝1敗とした藤井が3連覇と史上最速のタイトル獲得10期に王手をかけた。第5局は9月5、6日に静岡県牧之原市で指される。

 よほど驚いたのだろう。立会人の木村一基九段(49)から封じ手が読み上げられると、音声では確認したはずの藤井が、示された封じ手用紙へ視線を送った。

 豊島の封じ手は相手の歩の前に銀を打つ「歩頭銀」の勝負手だった。相手の歩の前に銀を捨てることで、飛車などの後押しを受けた自身の歩を前進させる。

 「あまり予想した手ではなかった。打たれてみると、こちらが難しいのかなと思った」

 終局後、藤井も認めた予想外の封じ手の狙いは何か。

 「(形勢は)悪そうだけど仕方ない。一番可能性がありそうな手」とした豊島。予想を外せば、対局再開のこの日朝9時まで15時間、その後の展開を自身だけ読み進められる。もちろん食事、睡眠は取らないといけないが、そのメリットを重視した。一方で、藤井の予想を外しながら、有効手でもなければいけない。高い条件を両立させる勝負手に、命運を託した。

 藤井はこの歩頭銀を歩で取るという、至極自然な一手に1時間6分を費やした。王を3段目へ上げた51手目の1時間14分に次ぐ2番目の長考。豊島にと金作りは許したが、長考中に読み進めたのか59手目、盤面中央へ放った角が終局まで四方へにらみを利かせた。

 6月、京都市での将棋大会に出席した藤井は、質疑応答で好きな駒に角を挙げた。「使い方次第で、性能が上げられる」。斜め四方には無尽に進むが前後左右へ進めない角は、攻守に使い勝手が悪い。逆に言えば、指し手の力量が問われる、攻防の角打ちで形勢を手繰り寄せた。

 藤井は7番勝負を3勝1敗とし、3連覇へ王手をかけた。あと1勝で一昨年棋聖戦以来のタイトル獲得が10期に達する。

 一度として敗退がない藤井は、もちろん史上最速での10期到達。歴代最多99期の羽生善治九段(51)でも10期到達には2度敗退した。「しっかり準備していい状態で臨みたい」。一瞬として非勢に陥ることなく、たどり着いた勝利後にも足元を見つめる言葉が印象的だった。

 《昼食は両者どんぶり》昼食は藤井が鉄火丼、豊島が親子丼を注文した。1日目は両者、地元食材を使った松花堂弁当だったが、局面が佳境に入る2日目は手早くエネルギー補給できるメニューを好むようだ。それでも藤井の鉄火丼は赤身マグロ、豊島の親子丼には地鶏「阿波尾鶏」を使用。羽織を対局室に置いたまま昼食会場へ向かった藤井を含め対局再開の5分前には両者、席に戻った。

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2022年8月26日のニュース