「聖の青春」の舞台、大阪の食堂「更科」閉店 故村山九段の師匠・森七段が訪れ惜別「家族のような存在」

[ 2022年2月22日 21:11 ]

閉店する食堂「更科」の最終営業日に同店を訪れた故人村山聖九段の師匠、森信雄七段
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 松山ケンイチ主演で映画化もされた大崎善生氏原作の小説「聖の青春」の舞台、大阪市福島区の食堂「更科(さらしな)」が22日、閉店した。午後8時の閉店前には同作の主人公で98年に29歳で亡くなった故村山聖九段の師匠、森信雄七段(70)が訪問。「村山君、(村山九段が過ごした)前田アパート、更科。家族のような存在だったのでなくなるのは本当にさみしい」と名残を惜しんだ。

 JR東海道線支線の地下化工事に伴う立ち退きのため、開店から50年でのれんを下ろした。近隣の関西将棋会館も老朽化のため23年度中に大阪府高槻市へ移転する。一気に様変わりする棋界の西の拠点。5歳で発症した難病の腎ネフローゼと闘いながら棋士を目指した村山九段とはその修業時代、2人で通った。

 「最初は僕が食事を作ったけれどダメで“食堂がいい”と。(更科で)うれしそうに食べました。実際に病院食を食べてみて、これならうれしいだろうなと」

 治療のため、味覚のない食事を食べ続けてきた。同店ではその要望に応じ、薄味の調理で提供してくれた。後に名人挑戦権を争うA級順位戦へ上り詰め、93年の本社主催・第42期王将戦7番勝負では当時の谷川浩司王将にタイトル初挑戦(0勝4敗)もした。

 同店にプロ入り前の奨励会時代から通った久保利明九段(46)は村山九段に誘われて通った。看板メニューの「だし巻き定食」をよく注文したそうで、「社会勉強をさせてもらいました」。村山九段と同世代の中田功八段(54)はこの日、開店1時間前に訪れた。

 中田は前日に東京での対局を終えた後、自宅がある福岡市へそのまま戻らず、わざわざ途中下車して宿泊までしての来訪。「同年代では村山九段が一番の人気者。彼を笑顔にさせようと一生懸命だったし、(亡くなった後)苦しいときも彼を思い出して頑張れた」。村山九段との思い出にある更科の店じまいを残念がった。

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2022年2月22日のニュース