「エアコミケ」で広がる楽しみ ステイホームの“宅コス”も好評

[ 2020年5月4日 11:00 ]

「エアコミケ」で華麗なアマビエコスプレを披露した綾川ゆんまおさん
Photo By 提供写真

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となった同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)」が、史上初のオンライン即売会「エアコミケ」として開幕し、いままでにない楽しみ方が広がっている。

 コミケは1975年に初回を迎えた。学校におけるクラブ活動としての漫画研究会などを中心に参加者を募り約700人が集まった。会場は会議室の一室で少女マンガファンの女子中・高校生が集う小規模なものだった。それがいまや世界最大の同人イベントに成長。19年12月に開催された前回は会期4日間で約70万人が来場するなど、世界中へ日本のオタク文化を発信する拠点となっている。

 そんなコミケに代わるオンラインイベントとして発案されたのが「エアコミケ」。ツイッターなどのSNSを通じて、同人誌の売買や、コスプレーヤーの写真を投稿して盛り上げる企画で、5日まで行われる。

 参加方法は至って簡単。「#エアコミケ」をつけて、SNSに投稿するだけで、内容の決まりもなく、楽しみ方は人それぞれ。イベントを運営するコミックマーケット準備会もツイッターに「只今より1日目を開催します。会場内は走らずに、ゆっくりと歩いて移動するよう、ご協力をお願いします」とあたかも通常通り開催されているかのような投稿をしている。

 通常であれば、会場内で行われている同人誌販売も全てオンラインでの販売となっている。本紙の取材に答えたコミケで同人誌を販売予定だったというサークル「らるりんたす」の10代男性は「数カ月かけて制作した本を見てもらえる機会が出来てよかった。これまで続いてきたコミケの火を絶やさず、次回に向けて盛り上げていければ」と熱弁した。

 一度は完全中止が決まったコミケだったが、「エアコミケ」としての開催が決まった背景にはこういったサークルに所属する男性をはじめとした声があった。最初は仲間内でSNSでやってみようと自然発生的に呼びかけたものだったが、同意の声が広がり、コミケの運営が公式なイベントとして認めることとなった。無名とはいえ、本業の傍ら同人誌の制作にうちこみ、日本におけるオタク文化を支えている一人一人の熱意がコロナ禍の暗いムードを吹き飛ばそうとしている。

 コミケ名物となっているトレンドを反映したコスプレも大注目だ。今回は緊急事態宣言下で、外出自粛中ということもあってそれぞれが自宅から趣向を凝らしたコスプレ“宅コス”を投稿。なかには、有名コスプレーヤーによる疫病退散を訴えるアマビエのコスプレもあり、本家をしのぐ華麗な姿に「セクシー可愛い」「クオリティ高っ!」「ありがたや…」などと注目を集めた。

 「エアコミケ」に関する投稿は開催初日だけで40万件を超えた。まだまだ手探り状態ではあるが、今後テレビ会議アプリ「Zoom」を使ったコスプレミーティングを計画している人もおり、家にいながらお気に入りのコスプレーヤーに会えると思うと、残りの日程がさらに楽しみになってくる。

 緊急事態宣言については全国を対象に5月31日まで延長で調整している。日に日に外出したいという思いは募るばかりだが、「エアコミケ」のように一人一人の創意工夫が“ステイホーム”を楽しみ、ひいては日常を取り戻す足がかりとなる。(記者コラム)

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