佐藤浩市 福島原発事故再現した過酷な撮影振り返り「出演者の顔が日々やつれていきました」

[ 2020年2月4日 20:50 ]

映画「Fukushima50」の舞台あいさつに登壇した佐藤浩市
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 俳優の佐藤浩市(59)が4日、都内で行われた映画「Fukushima50 フクシマフィフティ」(監督若松節朗)の特別試写会に出席し、舞台あいさつを行った。

 同作は2011年の東日本大震災による福島第1原発事故の際、死を覚悟して発電所内に残った人々の知られざる真実を描く。フクシマフィフティとは、そんな彼らを海外メディアが敬意を込めて名付けた実際の呼称にちなんでいる。

 福島第1原発1・2号機の当直長として最前線で戦い抜いた伊崎を演じた主役の佐藤は「この映画は、物語の時系列に沿って撮影が行われたんです。だから電源が落ちて暗闇になるとか、防護服の着用を余儀なくされるとかさまざまな事象が次々と起こっていく中、出演者みんなの顔が日々やつれていくのがわかりました」と、精神的にも肉体的にも過酷だった撮影を振り返った。

 さらに、当直長という責任ある立場を演じる難しさを聞かれると「これから映画をご覧になるみなさんも、撮影に携わった僕らも、最悪の事態を免れることはできたという結果は知っています。でもあの日、あの時、あそこにいた人たちは、これからどうなっていくのかがわかっていない。その恐怖とか責任とか、あまりに大きなものを背負いながらそこにとどまった気持ちを、この作品を見ていただく方々やこれから日本で生きる人たちにいかに感じていただけるかに腐心しました」。

 また同原発5・6号機当直長・前田役の吉岡秀隆(49)は、「あの3月11日はちょうど『ALWAYS 三丁目の夕日’64』を撮っていました。福島原発に被害が出たと知った時には、おそらく現場で戦っている人たちがいるんだろうと、撮影所から北の空に向かって祈った記憶があります」と、沈痛な面持ちで震災当日の記憶をたどった。撮影後の打ち上げで役のモデルになった実在の人々と面会する機会があったといい「本当に感謝しかなくて、『ありがとうございました』と伝えました。すると相手の方々が逆に『映画にしてくれてありがとう』と言ってくださって。作りごとではない、僕たち役者の意地のような凝縮した何かを少しでもお届けできたのかもしれません」と、演技を超えた境地の中での撮影だったことを明かした。

 最後に佐藤は「災害の爪痕を負の遺産のままで終わらせるのではなく、それを意義ある遺産に変えて明日、あさってにバトンを渡せるのは、我々人間だけができることです。今日はぜひ、よろしくお願いします」と熱く訴え、客席に向かって深々と頭を下げていた。

 「Fukushima50」は3月6日公開される。

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