テレ東「フルーツ宅配便」リアルさの秘密 脚本家は元風俗ライター「偏見持たずに見てほしい」

[ 2019年1月25日 08:00 ]

テレビ東京系ドラマ「フルーツ宅配便」の脚本を担当する根本ノンジ氏
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 デリバリーヘルス(通称デリヘル)を題材としていることで話題のテレビ東京ドラマ24「フルーツ宅配便」(金曜深夜0・12)。デリヘルが舞台だが直接的な性的描写はなく、主人公・咲田真一(濱田岳)を中心とした登場人物たちの人間模様がディープに描かれている。脚本を担当するのは同局「銀と金」(17年)「天 天和通りの快男児」(18年)などでも脚本を手掛けた根本ノンジ氏。知る人ぞ知るデリヘル業界の内部を忠実に再現している根本氏に話を聞いた。

 鈴木良雄氏の同名コミックが原作。同局制作局の濱谷晃一プロデューサーが原作を知り、ドラマ化の構想を思いついたのは2016年のことだった。濱谷氏は、かつて「殺しの嬢王蜂」(13年)「侠飯〜おとこめし〜」(16年)などの作品でタッグを組んだ“盟友”に脚本を依頼。「『この作品の脚本は根本さんしか書けません』と濱谷さんから連絡が来たんです。原作を読むと、デリヘルを舞台にしているにも関わらず人間模様を軸にしているのがすごく面白くて。だから迷わずにオファーを受けました」と根本氏は振り返る。

 濱谷氏が根本氏に熱烈オファーを送ったのには理由があった。それは根本氏の過去。20代の頃、風俗雑誌のライターとして活動していたのだ。「当時からテレビの構成作家などの仕事に携わっていましたが、それだけでは食っていけなかった頃、風俗雑誌の編集長をやっていた友人に声をかけられたのがきっかけです。風俗店で働く女の子のインタビューや、プロレスの覆面をかぶったキャラで、精力剤飲み比べ、“女王様きき鞭比べ”といった企画を連載していました」。

 根本氏が風俗ライターだった頃に経験したエピソードは、今作の脚本にも盛り込まれた。そのひとつが第1話の終盤のシーン。濱田演じる咲田が、ゆず(内山理名)の困窮を救おうとするも、借金の額が2000万円と知って何もできずにその場を立ち去る。このエピソードは根本氏が実際に取材した女性がモデルになっているという。「すごく美人な方だったんですが、風俗で働いている理由を聞いたら気の毒になり、なんとかしてあげたいと思ったんです。でも、背負っている借金の額が、2000万円ということが分かった。それが本当か嘘かは分からなかったですけど、自分じゃどうしようもない金額を聞いて、咲田とまったく同じように、中途半端な善意の気持ちなんて何の足しにもならないんだと痛感しました」。

 今作の放送がスタートする前には、インターネット上で「風俗を美化するドラマだ」など否定的な意見も目にしたという。そういった声に対し、根本氏は「まずは偏見を持たずにこのドラマを見てほしいですね。特に女性の方に見てもらいたいです。いろいろな事情を抱えた女性が、懸命に生きている姿を描いているので」と訴える。

 今やテレビ朝日系「相棒」、昨年公開の映画「終わった人」などで脚本を手掛ける売れっ子脚本家となった根本氏だが、「食えなかった時代に、あまり他の人がしていない経験をしたことが武器になっている」と語る。風俗ライターの経験が存分に生かされた今作。「取材させてもらった女の子や、編集長、ライター仲間への恩返しになればいいなと思っています」と話した。

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2019年1月25日のニュース