松本穂香 大阪の“冷凍マグロ”が全国区に 「この世界の片隅に」で評価上昇中

[ 2018年7月29日 09:30 ]

ドラマ「この世界の片隅に」で主役を演じる松本穂香
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 女優の松本穂香(21)が、主演する放送中のTBSドラマ「この世界の片隅に」(日曜後9・00)で奮闘している。3000人が参加したオーディションで主役に抜てきされたシンデレラ。視聴率も好調で、演技への評価も高まっている。片隅ではない。ドラマ、映画界の中心へとスターダムを駆け上がっている。 (伊藤 尚平)

 演劇に出合った高1の時、冷凍マグロの役を演じたことがある。「“出落ち”なんですけど、真剣にやったんですよ。最後はサーモンとくっついて終わるという。卒業するまで“魚の子ですよね”って言われてました」と笑って振り返る。その冷凍マグロは、今や脂の乗った清純派女優。TBSの看板枠「日曜劇場」を背負っている。

 ドラマは太平洋戦争中の広島・呉を舞台に、ヒロイン・浦野すずが戦禍にさらされながらも、明るく前向きに生きる姿を描く。15日の初回放送後、SNSなどに「すずそのもの」と原作ファンらが高評価する声が相次いだ。特に心をつかんだのは、度々ある「ぽーっ」とするシーンだ。

 「私も気を抜いたらぽーっとしちゃうところがあるんです。しゃべる速度も速い方じゃないので、スピード感も似てる。あまり無理してないですね」。言葉を探しながらゆっくり話す姿は、確かにおっとりした印象。相手をリラックスさせる空気感を備えている。

 主演の重圧よりも、支えられていると実感することが多い。最近も酷暑の中、段々畑での撮影の時に感じた。「春の設定だと結構着込んでて暑いんです。そうしたら、照明さんが“大丈夫?”と声を掛けてくださった。皆さんも大変なのに。だから、関わる全ての方があっての作品だと思う」。

 夫役で共演する松坂桃李(29)も、撮影のない日に「体調はどう?」と連絡をくれる。だから自分はできることを精いっぱいやる。撮影前から、犬の散歩や出掛ける時は、下駄(げた)を履いて慣れようとした。戦時下の人々の暮らしに合わせて、日頃から洋菓子を断った。すずも周囲の人に支えられて生きる女性。役柄そのままに、たくさんの人に愛されて演じている。

 「特別な仕事をしたい」とこの世界に飛び込んだのは、大阪の高校に通っていた17歳の時。進路を決める時期にハマっていたのが、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」。演劇部で活動していたこともあり、自然な流れで現在の所属事務所のオーディションに応募し合格。15年にデビューし、昨年は朝ドラの「ひよっこ」に“メガネっ子”の澄子役で出演を果たした。

 大きな財産になったのは演劇部での活動。「声優や女優を目指してる子など、個性的な人が多くて刺激的でした。自衛隊オタクの人は、実際に自衛隊に入ったんですよ」。

 素直に楽しいから演劇をやっていた。「変わり者って周りから見たらダサいと思われる。でも本人たちは恥ずかしいと思ってないし、好きなものを好きって言っているだけ。好きって言える場所で過ごした時間は、かけがえのないものだったと思います」。言葉の端々に、自分の行動に対する信念が見える。

 強い心も魅力だ。高校の卒業から半年後に上京。事務所側と話し合いがなかなか進まず、「自分で準備します」と引っ越した。

 「大阪に残る選択肢はなかったんです。東京に出なきゃ仕事はないと思ってたので」。

 本人からしてみれば「当たり前のこと」だった。

 ゴールデン帯のドラマで主演を張っても、気持ちはまだスタート地点。「向いてるとか向いてないとか判断するにはまだ早過ぎる。まだ何もやってない。正直、楽しい楽しくないも分からずに走っているという感じですね。余裕はないです」。

 清々(すがすが)しいほど殊勝に話す。このまま真っすぐ、極上の大トロのような女優に育ってほしい。

 ◇松本 穂香(まつもと・ほのか)1997年(平9)2月5日生まれ、大阪府出身の21歳。15年に短編映画「MY NAME」でデビュー。昨年の朝ドラ「ひよっこ」で知名度を高め、出演中のauのCM「意識高すぎ!高杉くん」も話題。出演映画「あの頃、君を追いかけた」が10月5日公開。1メートル62、血液型O。

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