映画「娼年」松坂桃李 1日半で「ゆとり」“童貞”から“娼夫”に 驚異の切り替え術

[ 2018年3月2日 10:00 ]

映画「娼年」の主演を務める松坂桃李(C)石田衣良/集英社 2017映画「娼年」製作委員会
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 鬼才・三浦大輔監督による性描写も注目される映画「娼年」(4月6日公開)の主演を務める俳優・松坂桃李(29)の“振り幅の大きさ”を示すエピソードが明らかになった。

 原作は、2001年の直木賞候補にもなった作家・石田衣良氏の同名恋愛小説。性の欲望をありのままに描く刺激的な内容に加え、さまざまな女性たちと体を重ねて向き合い、自らも成長と変化を遂げる主人公の娼夫・リョウの姿を繊細に紡ぎ、多くの女性から共感を集めた。

 16年8月に三浦監督演出、松坂主演により舞台化され、一糸まとわぬ出演者の熱演が大きな反響を呼んだ。困難と言われた映画化に、2人が再びタッグを組んだ。

 大学生活や女性との関係にも充実感を感じられず、バーテンダーのバイトに明け暮れる森中領(松坂)。ある日、領の中学校の同級生でホストクラブに勤める田嶋進也(小柳友)が御堂静香(真飛聖)という女性ををバーに連れてきた。

 「女なんて、つまんないよ」とつぶやく領に興味を持った静香は、仕事終わりの彼を待ち受け、自分の家に招き入れる。領の目の前に現れたのは、耳が聴こえない謎の女性・咲良(冨手麻妙)。静香は領に、咲良とのセックスを促す。それは、実は静香がオーナとして手掛ける女性のための会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」に入るための“情熱の試験”だった…。

 女優の桜井ユキ(31)馬渕英里何(38)荻野友里(35)佐々木心音(27)大谷麻衣(29)江波杏子(75)が、それぞれの欲望や思いを抱えるクラブの客として出演。松坂は6人と次々に官能シーンを展開。刺激的な場面は本編の半分以上を占める。

 NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」(12年前期)のヒロインの幼なじみ、映画「日本のいちばんい日」(15年)の青年将校、映画「彼女がその名を知らない鳥たち」(17年)のゲス男など、さまざまな役を演じてきた松坂だが、最大限に真逆に振れたのが、日本テレビ「ゆとりですがなにか」(16年4月クール)の童貞教師役と今作の娼夫・リョウ役と言えそうだ。

 対極にある役柄を演じた2作品。松坂は17年春、「ゆとりですがなにか純米吟醸純情編」(17年7月)のクランクアップ後、わずか1日半後に「娼年」の撮影を開始した。たった1日半で“童貞”から“娼夫”にシフトチェンジしたことになる。

 松坂は「舞台(版の『娼年』を)やっていたので、リョウは既に自分の中にあったのが大きかったです。流れも把握していましたし。だから、これだけ濃い作品に1・5日でクランクインできたのだと思います」。舞台版の感覚を取り戻すというより「『娼年』の映画化の話を聞いた時から頭の片隅にずっとあり、モチベーション、スタンスの準備はしていました」と振り返る。

 「今回は、その1・5日の間に渋谷に移り住んだんです。環境を変えました。撮影期間中(約3週間)はずっと渋谷のビジネスホテルに住んでいました。この作品は、その日の撮影での熱量を次の日も冷まさない状態に保ちたかったのですが、家に帰ると好きなマンガやゲームがあってリフレッシュしてしまうので、半ば強制的に自分を追い込むためです。撮影場所も渋谷が多かったですし」と切り替え術を明かし「自宅から通ったら、現場に行っていなかったかもしれません。撮影があまりに過酷で…。この作品を身近なところに置く。それが重要でした。ここまで精神的に追い込まれた現場は初めてかもしれません」と告白した。

 今作のメガホンを執った三浦監督は演劇ユニット「ポツドール」を主宰し、センセーショナルな演目が話題に。06年には「愛の渦」で“演劇界の芥川賞”と呼ばれる「岸田國士戯曲賞」に輝いた。映画は「愛の渦」「何者」などでメガホン。今作については「性描写に関しては一切妥協せず、でも生々しいエロティシズムを排除して、よりポップに描き切ったつもりでいます」とコメントしている。

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2018年3月2日のニュース