向田邦子賞発表 テレビドラマ脚本に演劇出身者が増えたワケ

[ 2017年4月4日 16:05 ]

記者発表会見に出席した第35回向田邦子賞した脚本家の矢島弘一さん
Photo By スポニチ

 昨年度に放送された優れたテレビドラマの脚本に贈られる第35回向田邦子賞(向田邦子賞委員会など主催)が4日、女優の前田敦子(25)主演のTBS「毒島ゆり子のせきらら日記」の矢島弘一さん(41)に決まった。6年ぶりのNHK以外の作品での受賞となった。

 同賞は選考委員である池端俊策さん(71)、富川元文さん(68)、大石静さん(65)、岡田惠和さん(58)、井上由美子さん(55)といった5人の脚本家が昨年度放送されたオリジナルのテレビドラマを対象に、脚本を読み、優秀な作品を選出するもの。

 池端さんは選考を通じ「向田賞も舞台を書かれていた方になることが多い」と分析。「そういう方たちの特徴はセリフが非常にうまい。そのことに尽きる。構成力とかは体験を重ねていくと備わるが、セリフは持って生まれたセンスが影響する。舞台で鍛えられたというより、そういうセンスがあるから舞台も書かれていたんだと思う。テレビでは登場人物たちの心理描写が大事になる。セリフが上手というのは大変な武器になる」と続けた。

 矢島さんが手がけた「毒島ゆり子のせきらら日記」は2016年4月クールに、水曜深夜の30分枠放送された「恋愛」と「政治」をテーマにした異色ドラマ。劇団「東京マハロ」の主宰である矢島さんもまた舞台で力を磨いた1人。井上さんは「この賞は放送されたものを見るのではなく、脚本を読んで判断するんですが、断トツで面白かったです。(矢島さんは)完成度と将来性両方を備えている強敵という感じ」と褒めちぎった。

 良作が生まれた要因として、深夜の30分ドラマという枠の問題もあると言う。富川さんは「脚本家が本を書く場がなくなったということ。オリジナルで1人で書いているというのが少なくなった。彼のは深夜の30分枠でどちらかというと、新人が入り込める余地がある」。井上さんも「NHK以外では6年ぶりがこの作品で、深夜というのは象徴的。ゴールデンの民放のドラマは脚本家ひとりでは使いづらくなっているのかなと思います」と話した。

続きを表示

2017年4月4日のニュース