釜石に「おかえりなさい」島倉千代子さん歌碑立つ

[ 2016年3月31日 11:00 ]

岩手県釜石市の旅館「宝来館」の敷地内に建立された島倉千代子さんの曲「おかえりなさい」の歌碑。背面は同曲のジャケット

 2013年に死去した歌手の島倉千代子さん(享年75)の曲「おかえりなさい」(07年)の歌碑が、東日本大震災の被災地である岩手県釜石市に建立された。島倉さんの誕生日である30日、除幕式が行われた。設置されたのは、三陸沖沿いの旅館「宝来館」の敷地内。14メートルの津波が襲った場所で、島倉さんが被災地を見守る。

 ♪あなたの帰りを待っている 変わらぬ心がここにある――。全国から集まったファン70人が、除幕式で声を合わせて歌唱。高さ90センチ、幅1メートル40の歌碑。背面には、島倉さんが優しくほほ笑むジャケット写真を配置した。同曲は定年を迎える団塊世代の男性に向けて歌ったもの。震災後、「帰っておいで」と呼び掛ける歌詞が、犠牲者や行方不明者に向けて歌っているような内容であることから、島倉さんは「被災地が落ち着いたら、“おかえりなさい”を歌いに行きたい」と希望。その思いを遂げられぬまま、他界した。

 それを知った後援会の吉田恵美子代表(65)が中心となり、「思いをかなえたい」と被災地に歌碑を建てることを計画。後援会に寄付を募り、東京・北品川の島倉さんの墓を手掛けた石材店に石碑の製作を依頼した。製作には約200万円かかった。

 歌碑が立った「宝来館」は、全半壊の被害を受けた旅館。女将の岩崎昭子さん(59)が、島倉さんの思いを知って快く場所を貸し出した。

 除幕式の司会を務めた、岩手県花巻市の小松義次さん(66)。吉田代表と以前から親交があり、歌碑建立に尽力した一人。03年に釜石に建てた自宅は、津波で流された。夫人の両親が犠牲となり、義母は今も見つかっていない。「気持ちが重なる詞。戻ってきてほしいね」と目頭を熱くした。隣接する大槌町から訪れた松原清さん(72)も「歌碑が希望の明かりになってほしい」と話した。

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2016年3月31日のニュース