防御率では見えないMLB球団の沢村の真の評価 WHIP1・437、IR-A%「48」が意味するものは

[ 2023年1月12日 08:23 ]

沢村拓一(AP)
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 MLBのストーブリーグも1月中旬に近づき、沢村拓一(34)や筒香嘉智(31)の行先が気になる段階に入ってきた。とりわけ沢村は昨季49試合に登板し防御率3・73の成績。敵地では23試合に投げ防御率0・84。ゆえに日本のファンの間ではそこそこの契約を手にすると期待している人もいるかもしれない。しかしながら現実は甘くない。中継ぎ投手を防御率で評価するMLB球団はないからだ。改めて書くまでもないが、イニングの途中で走者を残して投手が交代した場合、救援投手が失敗しても、走者の得点は、交代前の投手に失点および自責点として記録される。リリーバーの防御率には反映されない。

 そもそも日本で試合終盤を任されてきた沢村が8回、9回に投げられないのは、四球が多く1イニング平均で1・5人近い走者を背負ってしまうから(2年間のWHIP「与四球数+被安打数」は1・437)。そこで他の投手がランナーを背負った場面での登板、いわゆる「火消し」に回ることになった。

 そして21年は9イニング当たりの三振奪取率が10・4個と高くピンチを三振で切り抜けたが、22年は7・1個まで下がり、そうはいかなくなっていた。「火消し」の役割でMLB球団が見るのはIR-A%(Inherited Runs Allowed Percentage)だ。21年、メジャー1年目の沢村は登板時に35人の走者を背負って(Inherited Runners/IR)マウンドに立ったが、ホームに生還した(Runs Allowed)のはわずか6人、IR-A%は17%でととても良かった。しかしながら22年は33人の走者を背負って、ほぼ半分近い16人に得点を許し、IR-A%は48%と著しく悪化した。防御率だと21年の3・06と22年の3・73で大差ないように見えるが、IR-A%だと違いは明白である。つまり今現在のMLB球団の評価は高くない。

 ゆえに沢村をよく取材していたボストングローブ紙のピーター・エイブラハム記者は「沢村は日本に帰るのではなくメジャーでの出場機会を求めている。4月に35歳になるが、マイナー契約に値する」と年明けに報じた。招待選手でいいから、もう一度メジャー挑戦の機会を与えるべきとベテラン記者は提案したのである。このオフのリリーフ投手の市場を見ると、3年以上の契約を得たものは5人、2年が6人、1年が16人だ。筆者はエイブラハム記者とは違ってメジャー契約の可能性もあると見ているが、好待遇は無理で良くて1年契約だと思う。

 今の沢村に必要なのは、待遇にこだわらず、出場機会を与えてくれそうなチームを選んで、再びマウンドで自分の力を証明し直すこと。沢村にはMLBでもまれな90マイル台のスプリットがあり、直球の平均速度は22年も95・9マイル(約154・3キロ)だった。元日本ハムのクリス・マーチン投手は22年のIR-A%が19%、特にシーズン途中に移籍したドジャースでは7%と抜群の数字。このオフ、36歳で2年総額1750万ドル(約23・2億円)でサインしている。(奥田秀樹通信員)

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2023年1月12日のニュース