仙台育英 いざ夏春連覇!須江監督 森保ジャパンからの刺激を力に再び「新しい景色」を

[ 2022年12月30日 05:15 ]

インタビューに答える須江監督 (撮影・光山 貴大)
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 今夏の甲子園で東北勢として春夏通じて初の全国制覇を果たした仙台育英(宮城)の須江航監督(39)がスポニチ本紙の取材に応じ、高校野球史に新たな一ページを刻んだ激動の2022年を振り返った。大のサッカー好きでもある指揮官は今回のW杯カタール大会でスペイン、ドイツの強豪を破った森保ジャパンからも感銘を受け、出場が当確している来春選抜での「夏春連覇」も誓った。

 激動の日々が続いた一年が、もうすぐ終わる。例年は静かな時間を過ごす年末となっても、“追われる立場”となった須江監督に本当の意味での安息はない。狙うは来春選抜での夏春連覇。「大横綱はいない。凄く拮抗(きっこう)した大会になる。この冬に短所と長所を考え、計画的に練習した学校が制すると思います」と表情を引き締める。

 日本一から12日後に始動したチームは10月に東北大会を制して来春選抜出場を確実にした。11月21日の明治神宮大会準決勝では近年の宿敵である大阪桐蔭に敗戦し、今年の公式戦の全日程を終えた。12月1日には須江監督が今夏の甲子園大会の優勝インタビューで発した「青春って、すごく密なので」がユーキャン新語・流行語大賞の選考委員特別賞を受賞。超多忙な日々にも「疲れている場合ではないですよ」と笑う。

 実は大のサッカー好き。初のW杯出場を逃した93年の「ドーハの悲劇」にはテレビの前で頭を抱えた。今回W杯でドイツ、スペインを破った森保ジャパンの戦いも全試合チェック。大会一番のシーンは「三笘の1ミリ」を挙げ「システムの勝利、イメージの共有、ガッツ、根性。スポーツの全てが詰まった素敵なプレー」と語った。

 世界を驚かせた後半で選手とシステムを大胆に入れ替える森保一監督の戦術はフットサルからアイデアを得たもの。須江監督も過去にクリケットやバドミントンの指導者らと交流し、指導へのヒントを得てきた。中でもサッカーには「野球的な要素を感じる。よく“野球は(サッカーの)セットプレー”だと話しています。状況やカウントのセットを練習しておけば驚くようなことは存在しない」と言葉に力を込める。

 今夏の甲子園大会で頂点を極めた後、須江監督は初心に戻る意味も込め、今後の目標を「2度目の初優勝」に設定した。再び頂点を狙う来春選抜へ向け「過去の学校がやっていない取り組みをして大会に臨み、結果的に優勝を狙いたい」と秘策も練る。厳しい東北の冬を越えた先に「新しい景色」が待っている。(柳内 遼平)

 ▽今夏の甲子園大会優勝 初戦となった2回戦・鳥取商に5投手の完封リレーで10―0と快勝。3回戦で明秀学園日立(茨城)に競り勝つと愛工大名電(愛知)との準々決勝、東北勢対決となった聖光学院(福島)との準決勝にも快勝。下関国際(山口)との決勝戦は岩崎生弥(3年)の満塁弾などで8―1で東北勢初優勝。須江監督は直後のインタビューでコロナ下で学生生活の大半が制限された全国の高校生を思いやり、涙を流しながら「青春って、すごく密なので」と語って全国の感動を呼んだ。

 ◇須江 航(すえ・わたる)1983年(昭58)4月9日生まれ、埼玉県出身の39歳。仙台育英では2年時から学生コーチで3年時に春夏の甲子園に出場。八戸大(現八戸学院大)でも学生コーチを務めた。06年から仙台育英の系列の秀光中の軟式野球部監督を務め、14年に全国大会優勝。18年1月から仙台育英の監督となり、今夏を含めて5度の甲子園出場に導く。情報科教諭。

 ≪最速147キロ左腕仁田&主将で遊撃手山田プロ志望を表明≫今夏の日本一に貢献した投打の軸である2人がプロ志望を表明した。最速147キロ左腕・仁田陽翔(2年)は「プロに行きたい。選抜では151キロを出したい」と大舞台でのアピールを誓う。主将に就任した遊撃手・山田脩也(2年)は攻守ともにスカウト陣から高い評価を受けており「高卒でプロに行くことを小さい頃から目標にしてきた。少しでも早く活躍して支えてくださった方に恩返ししたい」と目を輝かせた。

 ≪クリスマスに駅伝…練習工夫に見た「須江マジック」≫高校まで野球部だった記者は冬の練習が苦手だった。実戦的な練習は少なく、地道にウエートトレーニングや長距離走などを繰り返す日々。だが須江監督は工夫一つで苦しいメニューも笑顔あふれる練習に変えてしまう。今回、同校監督室で取材をしていた際、何げなくテレビで全国高校駅伝を見ていた指揮官が「今日はクリスマス駅伝をやろうと思います」と言った。突如、開催が決まった大会。選手たちはハチマキを利用してたすきを作り、どこからかサンタをイメージした赤い帽子も見つけてきた。全区間、約1キロのスピードレース。走る選手も応援する選手も笑顔だ。鍵はネーミングとタイムリー性。思わぬタイミングで「須江マジック」を体感できた。(アマチュア野球担当 柳内 遼平)

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