「払いすぎ」と「長すぎ」 千賀のメッツとの大型契約にも見て取れる今オフFA市場の特徴

[ 2022年12月12日 04:00 ]

ペイペイドームを訪れた千賀(撮影・岡田 丈靖)
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 レッドソックスと5年総額9000万ドル(約123億3000万円)で吉田正が契約合意したのに続き、千賀がメッツと5年総額7500万ドル(約102億7500万円)で契約合意。昨オフもカブス鈴木が5年総額8500万ドル(約101億2000万円=当時のレート)で契約した。メジャー取材歴26年の奥田秀樹通信員(59)が、続出する日本選手の大型契約の背景を解説した。

 エンゼルス・大谷の大活躍により、日本野球のレベルの高さが改めて評価され、日本選手への期待感が大きくなっていることは、一つの大きな要因に間違いない。加えて、根底にはMLBを取り巻く現状が大きな要素となっている。

 今オフのFA市場の大型契約には2つの特徴がある。「払いすぎ」と「長すぎ」である。ヤンキースに残留したジャッジは9年総額3億6000万ドル(約493億2000万円)、レッドソックスからパドレスに移籍したボガーツは11年総額2億8000万ドル(約383億6000万円)で契約した。ともに30歳。40歳近くになってもその価値があるはずがない。

 「払いすぎ」の理由は球団がお金を持っているからだ。22年のMLBの収益は110億ドル(約1兆5100億円)。コロナ前の19年の107億ドル(約1兆4700億円)を上回る新記録となった。イチローの1年目、01年の収益は35億7000万ドル(約4891億円)で3倍になった。

 さらに新労使協定で、ぜいたく税の基準額が21年の2億1000万ドル(約287億7000万円)から、23年は2億3300万ドル(約319億2100万円)となった。22年も増額されたが協定合意が3月だったため、適用は実質、今オフから。加えて歴史的に見ても新協定(有効期間5年)締結後数年は労使がもめることがなく、オーナーらは安心して投資する傾向にある。

 「長すぎ」る原因は、ぜいたく税と関連する。基準額を超えないよう、平均年俸を低く抑え、期間を長くして総額を保とうとする。これらの要因が今オフの大型契約化を加速させ日本選手もその恩恵を受けている。

 3年後のメジャー挑戦を確約されたヤクルト・村上に、米メディアが早くも契約総額を3億ドル(約411億円)と予想。来季以降に移籍を目指すメジャー予備軍にも、恩恵はありそうだ。

 ▽ラグジュアリー・タックス(ぜいたく税) 年俸総額が上限を超えた球団が、ペナルティーを支払う課徴金制度。03年に導入。大リーグ機構に納められた後、年俸総額の低い球団に分配される。22年の基準額は2億3000万ドル(約315億1000万円)で、ドジャース、メッツ、ヤンキース、レッドソックスの4球団が超過。新労使協定締結により段階的に引き上げられ、23年は2億3300万ドル(約319億2100万円)となり、26年には2億4400万ドル(約334億2800万円)となる。

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2022年12月12日のニュース