【内田雅也の追球】才木に見る村山実の面影 降板時の拍手、「打倒巨人」の快感知ったことだろう

[ 2022年8月22日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6―1巨人 ( 2022年8月21日    東京D )

<巨・神>初回、見逃し三振の坂本(撮影・村上 大輔)
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 村山実が逝ったのは24年前のきょうだった。1998年8月22日、直腸がんのため、神戸大医学部付属病院で死去した。61歳の若さだった。

 家族など限られた者にしか知らせず、孤独に病魔と闘った最期だった。

 2代目のミスター・タイガースと呼ばれた村山とこの日の阪神先発・才木浩人には共通点がある。村山は住友工高(現・尼崎双星高)、才木は須磨翔風高とともに兵庫県の公立校出身なのだ。同じ右投げで、ともにフォークを得意とする。

 村山はフォークの使い手としては一流だった。何しろ制球がいい。シーズン暴投数が0、1、2……が普通で、最も多かった1961(昭和36)年も4個。才木は22試合に登板した2018年は暴投5を記録していた。

 右肘トミー・ジョン手術から復活した今季はまだ暴投がない。もちろんワンバウンドを後逸しない捕手の功労もあるが、フォークの精度が高まっている証だろう。

 この日も不安定な立ち上がりだった1回裏、坂本勇人をフルカウントからフォークで見逃し三振に切った。梅野隆太郎が要求し、才木も応えるだけの自信があったのだろう。高めからストライクゾーンに落ちる球筋に坂本は反応できなかった。

 2回裏無死一、二塁のピンチでは決め球フォークで連続三振で2死を取り、8番打者(若林晃弘)に簡単に勝負にはいかなかった。四球で満塁にしても次の投手(マット・シューメーカー)で打ち取る冷静さがあった。

 7回裏、岡本和真にソロを浴び、続く打者から三振を奪って1死、お役御免となった。6回1/3を4安打1失点。先発として試合をつくり、十分に責任を果たした。

 また、回の途中での降板で拍手を浴びながらベンチに帰ることができた。ひょっとして、表の攻撃で才木を打席に送った際、首脳陣はこの演出を考えていたのかもしれない。大リーグの監督には好投した先発投手を代える際、一度マウンドに上げてから交代を告げる配慮を施したりする。

 ともあれ、才木は3勝目、4年ぶりの巨人戦白星に笑顔が弾けた。カード前、同率で並んでいた巨人に3連勝。「打倒巨人」に魂を込めた村山も喜んでいよう。村山他界から2カ月余り後に生まれた才木も「打倒巨人」の快感を知ったことだろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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