美談大賞ノミネート「お前、ファン増えたな」

[ 2021年7月28日 08:00 ]

伊藤光(左)とハイタッチする三嶋一輝(撮影・椎名航)
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 2月末のコラム。記者が勝手に決定する今季のDeNA「キャンプ美談大賞」に、山本祐大捕手がドラフト1位・入江大生投手に発した言葉「俺たちは若い2人。当たって砕けろじゃないけど攻めていかないと」を選出した。

 そして7月14日、甲子園の阪神戦。こちらは今季の「シーズン美談大賞」にノミネートできる心に染みいる言葉が生まれた。

 「お前、ファン増えたな」。4―3の最終回。マウンドに上がった守護神・三嶋一輝投手に伊藤光捕手が投げかけた言葉だ。

 右腕はこの回を無失点に封じ、16セーブ目。「3点差をひっくり返され、それで寝れなくて。早くリベンジしないといけないと思った。阪神ファンは熱くて、でも自分の名前がコールされたら、光さんの言葉でリラックスできた」。三嶋の試合後のコメントは、伊藤の言葉が「魔法の言葉」だったことを証明している。

 12日の3連戦初戦の甲子園は、衝撃的な光景に包まれた。3―0とDeNAがリードの9回2死一塁から、三嶋が5連続短打を浴び4失点でサヨナラ負けを喫した。精神面の影響を考慮した三浦大輔監督は、三嶋を翌日の試合は「上がり(休み)」とし、ベンチ入りメンバーから外した。

 14日は甲子園に「ピッチャー・三嶋」がコールされたとき、1万5254人の観衆から大きな拍手が起こった。阪神ファンの「三嶋の登場で今日も何かが起こるぞ」の思いが、その拍手に込められていたのは間違いない。

 そして、その熱気を逆手にとった伊藤光の機転の利いた言葉。山本もそうだが、投手をなごます細心の配慮は、まさに「女房役」だ。入江も三嶋も捕手の言葉に冷静になり、直後に結果を出した。

 借金13で最下位のDeNA。だが前半戦最終戦でドラマ、美談が生まれた。8月中旬から後半戦は再開。残り57試合。「ファンの増えた」三嶋の躍動が続くことを願っている。(記者コラム・大木 穂高)

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2021年7月28日のニュース