【スポニチ潜入 番外編】24年ぶり春頂点から18年ぶり夏切符へ――「新たな伝統」目指す兵庫・神港学園

[ 2021年6月23日 10:00 ]

神港学園・北原直也監督(右から2人目)    
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 「試合後に記者の方に聞いたら、春の優勝は24年ぶりだったそうで…自分たちの代以来だったみたいですね」

 神港学園・北原直也監督は、そう言って苦笑した。職業柄、気苦労も多いのか、頭髪には白いものが増えたように感じた。それを指摘すると、「お互いにね」と反撃を受けた。

 先日、兵庫県神戸市内にある神港学園を訪ねた。春夏通算8度の甲子園出場を誇るが、春は10年、夏は03年を最後に聖地から遠ざかる同校。今春、投げては最速146キロ、打っても高校通算30本塁打超の投打の柱・三木勇人選手を中心に勝ち進み、春の兵庫大会を制した。それが24年ぶりだったと知り、近況を聞いてみようと連絡を取った。

 現監督は、私神港時代から30年以上にわたって指揮を執った実父・北原光広前監督(現流通科学大監督)の後を受け、18年春に監督就任。「矛盾するかもしれませんけど…もちろん勝つことを目指していますが、勝つことがすべてではないと思っています。子どもたちの人間としての成長を大事にしています」と心身両面の指導に心を砕く日々だ。19年春からは社などを率いた森脇忠之氏を総監督に迎え、指導陣も充実。部員数は3学年で約60人を数える。基本的には北原監督が主力組のAチーム、森脇総監督が下級生主体のBチームの指揮を執り、二人三脚でチーム強化に取り組む。「総監督には本当に助けていただいています」。今年で現体制3年目。24年ぶりの春の頂点はチーム力の底上げを物語る一つの「結果」と言えた。

 そして、18年ぶりの夏切符に向けた課題も浮き彫りにした。近畿大会では、1回戦で智弁和歌山に0―1で惜敗。指揮官は、そのスコア以上に力の差を痛感していた。「周りは“惜しかった”と言ってくれますが、自分の中では全然でした。正直、大きな力の差を感じました。特に打撃面は何もできなかった。それは部員たちにも試合後に伝えました」。全盛期の「神港野球」を知るからこそ、求めるところも高くなる。

 冒頭の「24年前」。当時の神港学園は県内最強だった。特に北原監督の世代は松陽、高砂、宝殿、竜山といった東播地区の有力中学から、北原監督(法大―JR西日本)、藤原通(立命大―阪神)、金子博哉(明大―ヤマハ)、米川将義(三菱重工神戸)らが集まり、さながら「オール播磨」の様相を呈した。その世代が下級生時から主力となり、96年夏に甲子園出場。97年夏も兵庫大会決勝で敗れたとはいえ、報徳学園と激闘を演じた。他校を「いい意味で」上から見下ろし、立ち向かってくる相手をことごとく粉砕する――。まさに全盛期だった。

 そのチームで2年時から正捕手として中心選手だった北原監督も「当時は、どことやっても負ける気はしませんでしたね。自分たちが、どこにも負けない練習をしていた自負がありましたから」と24年前に思いをはせた。そして言葉を続けた。

 「春に勝てたから言うのではなく、今のチームには冬の練習から“この子たちなら行けるかもしれない”という雰囲気を感じていました。部員たちは、それだけ必死に練習に取り組んできましたし、手応えもありました。今の3年生は去年の3年生を見て学んでくれましたし、今の2年生もそういう先輩たちの姿を見ています。神港に、新しい伝統をつくっていってくれればと期待しています」

 22日に組み合わせ抽選会が開かれた兵庫県は150チーム以上が参加する全国屈指の激戦区。近年は神戸国際大付、報徳学園、明石商が3強を形成しており、その後ろに第2グループとして滝川二、東洋大姫路、育英、神戸弘陵、社、市尼崎などが続く。神港学園も現状、その一角だ。

 「春、優勝できたのはよかったですが、やはり大事なのは夏。夏に勝ちきらないと。絶対に受け身になってはいけない。向かってくる相手に、こちらも全力で向かっていかないといけない」と北原監督。18年ぶりの夏の甲子園出場、そして「新たな伝統」の構築を目指す神港学園は、7月15日、姫路飾西と生野の勝者と初戦に臨む。(惟任 貴信)

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