【新春対談 新井氏―広島・誠也(3)】初動負荷トレで進化中「今までのオフと比べたら全然違う」

[ 2021年1月3日 10:30 ]

<広島正月用対談>新井貴浩氏(右)の言葉に耳を傾ける鈴木誠(撮影・北條 貴史)
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 新井 崩されながらも拾っていけるのが好打者じゃないかな。その意味で初動負荷に取り組む誠也は、ますます高いステージに行けるのかなって思うね。

 誠也 (苦笑)。

 新井 オフは「ワールドウィング」(トレーニング研究施設=鳥取市など)に通っていたんだよね。どう?

 誠也 今まではウエートトレーニングの知識しかなかったので、柔軟性やそれ以外の知識を深めるという思いで行きました。もともと興味はあったので。

 新井 新しいことにチャレンジだな。

 誠也 そうです。挑戦。去年、新型コロナで開幕が延期になった2カ月ぐらいの間、トレーニングをオフ以上にやったんですよ。

 新井 延びた時ね。

 誠也 きっちりやったんですけど、多分そのせいで固まってガチガチになり過ぎて…。

 新井 それはフリーウエートをやり過ぎたということ?

 誠也 そうです。なじむのが遅く、体を思うように扱えなかったというか、こうやりたいのに打席でうまくできないとか、ギャップがすごかった。背中が痛かったり、固まって息が苦しい状況が続いたので、今年は柔軟性を出したいと思って取り組んでいました。

 新井 初動負荷をやりながら、野球の動きもやっていたの?

 誠也 バッティングやロングティーとか。治療も兼ねて、走り方や体の使い方などの反復練習もやっていたので、今まで無かった知識が増えていい勉強にはなっています。

 新井 じゃあ、現状はいい感じなんだ。

 誠也 全然いいですね。体の動き方とか、今までのオフと比べたら全然違いますね。

 新井 フリーウエートばかりやると、強さはあるけど、なじむまで時間がかかるし、しなやかさが無くなる。

 誠也 肩甲骨やその周辺、関節、胸郭とかが動けば、筋肉が少々硬くても動きはしなやかに見えると思うんです。ただ、そういう箇所が固まると、使いたい所が使えずガチャガチャに見えたりするのかな…と。でも、そこが使えると筋肉も軟らかくなるし、股関節や肩周りなどの動き方が全然違うんです。

 新井 なるほど。

 誠也 以前だとゴンと打っていたのが、ちょっとこうバラバラに動く感覚が出てきて。

 新井 いい意味で。

 誠也 はい。体がうまく連動してつながってくる感覚というか。

 新井 うんうん。

 誠也 でも、それは実験でもあります。初動負荷には筋力面が落ちる印象があるんですが、重りの強さがあるトレーニングもできると聞いたので、柔軟性を保ちながらどこまで強くできるか、瞬発力を出せるか、今は実験中という感じです。

 新井 体が別々に動く感覚と言ったけど、ムチのように使えたらすごくいいと思うね。打者はバットのヘッドを瞬発的にどれだけ走らせられるかが一番大事で、そうするには体にしなやかさがないとダメだと思うから。

 誠也 初動負荷のジムはいろんな場所にありますが、行くなら鳥取で直接勉強させてもらおうと思って。

 新井 いいねぇ。キミは貪欲で。

 誠也 去年がひどかったですからね。ただ、今までにない感覚が得られそうなんですが、トレーニングをしたい側の人間なんで、物足りなさもあって…。

 新井 分かるよ。

 誠也 まずは我慢して新しいことに取り組んでみて、もの足りなければ少しずつ戻せばいいかな…と。

 新井 フリーウエートって、やったらやっただけ実感が湧く。特に胸回りなどの大きな筋肉だとパンプアップしてくるから。初動負荷はその点、やった気がしないというか、不安になるよね。

 誠也 不安になります。疲れはたまるのでよく眠れるんですが、体がきつく“オレ頑張ったゾ”みたいなのがない。その分、体が動くので、すぐに実戦の動きができて、この時期だとまず投げられなかった距離の遠投がすぐにできたり。キャンプは多分、一発目からいい動きができるんじゃないかな…と思います。

 新井 もうイメージができるわけ?

 誠也 できますね。今の時点で結構いけるような、去年のシーズン中に比べたら、むしろ全然いいぐらいで。

 新井 じゃあ、今から初動負荷をやったら現役復帰できるかな?

 誠也 ゴルフがうまくなるか…と(笑)。

 新井 知ってる? すごい高みを目指しているからな(笑)。

 誠也 聞いています(笑)。

 新井 ゴルフは胸郭が大事。肩甲骨や股関節も。

 誠也 それは初動負荷とはちょっと(笑)。

 新井 (笑)。不安と言ったけど、大丈夫だと思うよ。マッスルメモリーは知ってる?

 誠也 いえ。

 新井 追い込んでやっていた人間は、フリーウエートをやめてもちょっとやれば戻る。今までの積み重ねがあるから、筋肉が覚えているんだって。

 誠也 なるほど。

 新井 じゃあ、キャンプインしてどんな動きができるか。自分でも楽しみだろ?

 誠也 楽しみです。

 新井 いいよなぁ。誠也はそういう努力が苦にならないから。マジで嫌だったし、義務感だけで練習していたからうらやましい。

 誠也 何か新しいことは楽しいです。

 新井 そういう才能があるんだと思うね。練習は好きでしょ?

 誠也 嫌いではないですけど、元々は大嫌いだったんです。

 新井 エッそう?

 誠也 高校時代は練習が嫌でさぼったり、ズルばかりしていました。でも、プロはすごい選手が多すぎて、この人たちが休んでいる時にやらないと、追いつけないと思い始めた時期があって。

 新井 そこで気付いて変わったの?

 誠也 変わりましたね。その人たちより倍やれば、追いつき追い越せると思って。そこからは練習するのが普通になりました。

 新井 食事や睡眠を取るのと同じ感覚?

 誠也 やっておかないと追い付かれる不安は常にありますね。

 新井 素晴らしい。いろいろ話を聞かせてもらったけど、今季が楽しみだ。ケガがないよう祈っています。

 誠也 ありがとうございました。 

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