【阪神・矢野監督 新春インタビュー(1)】巨人への意識さらに強く カギは藤浪ら先発投手

[ 2021年1月3日 11:00 ]

<阪神・矢野監督インタビュー>矢野ガッツを決める矢野監督(撮影・坂田 高浩)
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 3年目を迎えた阪神・矢野燿大監督(52)がスポニチの新春インタビューで、チームの成長と確かな手応えを感じ取っていることを明かした。3位、2位と一つずつ順位を上げ、21年に狙うは「優勝」だけ。昨年8勝16敗と大きく負け越した巨人に勝つために、「球際に強くなる」「先発投手が抑えて、先発投手から得点する」…を実践する。(取材・構成=山本 浩之)

 ――一昨年が3位、昨年が2位と来て、今年はファンも優勝を期待している。矢野監督の手応えは?
 矢野監督 感じてるよ。意識が浸透してきたことがデカいんだけど、去年もめちゃくちゃ苦しかったし、全然うまく行かなかった中でも、みんな積み重ねから粘ってくれた。しょうもないことと思われることもあったけど、全力疾走とか苦しい時にどういう姿勢で頑張るか、ピッチャーのバックアップとか。そういうものを大事にしていくことで、あきらめない気持ちが強くなっていくと思うと伝えさせてきてもらった。みんなそういうことをやりきってくれているからね。

 ――さて、今季の巨人戦は甲子園(4月6日)から始まる。昨年は東京ドームの3連敗からスタートだった。
 矢野監督 ビジター(※1)から始まったことは言い訳にしかならないし、それは受け止めている。ただ、ジャイアンツに対しての意識はさらに強くなった。ジャイアンツに勝ったから優勝できるわけではないけれど、2年目の去年も「より優勝するために意識して戦う」と話していて、こういう結果(※2)になってしまった。阪神ファンの人が巨人に勝ってほしい気持ちがあるのは、すごくよく分かっているし、だからこそジャイアンツを意識して戦うのは、2021年はより強い形で。去年は球際の強さの差で負けたと思ってて。そういう意識の中で巨人とどう戦うかは、ファンの人も注目してくれると思うし、倒さなければならない。

 ――では、どうすれば倒せるのか。
 矢野監督 これは全体的なことだけど、先発ピッチャーから点を取れなかった(※3)。そこが打線としては負けた要因。西(勇)はめちゃくちゃ頑張ってくれたけど(※4)、それ以外で負けてる試合というのは先発ピッチャーが先に点を取られている。どの試合もそれは意識していることだけど、巨人に勝つことを考えれば、先発が頑張ることも必要になる。だから、ドラフトもルーキーの先発できるタイプのピッチャーが欲しかった。そこの補強もできたし、外国人も去年は1年間ローテを守ることがなかなかできなかったけど、そこを1年間やってもらう、ジャイアンツを抑える意識ではやっています。外国人と新人の補強、もう一度、晋太郎(藤浪)が先発に戻るというところで、上積みできて変わっていけるかな、と。

 ――去年を振り返っても、先発の左投手が不足している。その意味でも高橋にかかる期待は大きい。
 矢野監督 遥人が1年間投げてくれたら貯金ができるピッチャーになってくれると思う。去年良い経験ができたのは、巨人戦(※5)で勝った時に状態が悪い中で14三振取って勝てた。そういうことは、今後プラスに働いていくと思うし。遥人が1年投げきるだけで、プラスアルファになってくれる。

 ――今季の構想が整ってきた中で、左が唯一の弱点にも見える。
 矢野監督 新人の伊藤(将司=ドラフト2位)もピッチング自体はできるから。うちの投手陣の中に入っても、勝負できる素材です。

 ――ロハスはどの打順を?
 矢野監督 3なのかな。スイッチというのはデカい。例えばボーアになると、うちの左の人数からして打線が組みにくくなってしまっていた。どうしても右であってほしい、と。でも、両方が一番ありがたい。ジャイアンツなんかは、だいたい、ジグザグで組むしね。そこにボーアがいることで、去年は左の3枚が必ず出てきた。中川は後ろとしても高梨がいて、大江がいて。そこに右がいるのはデカい。1、2番が近本と健斗(糸原)だったとしても、あとは絶対ジグザグで組めるようになる。サンズとマルちゃん(マルテ)が競争して3番に入る可能性もある。マルちゃんはファーストをやらせるけど、ロハスの守備力はサンズより高いと思っているので。サンズは最後、覚えられたかな、というのはあるけど、どれぐらいの力があるかも分かったから。本当は木浪や北條が成長して2番に入ってくれたら、健斗が還すところで使えるようになる。6番ぐらいでいてくれたら、面白いな、ってのもある。

 ――ロハスの打者としての特徴は。
 矢野監督 左の方がいいかな。どのコースにも合わせられる。右の方が当たれば飛ぶけど、打ってる形を見ても技術的には左の方が高いように見える。

 ――ロハスに加え、投手ではアルカンタラを獲得。助っ人は昨年に続く大所帯となり、やりくりが大変になるのか?
 矢野監督 うれしい悲鳴になってくれることが一番。去年はマルちゃんを上げたいところでケガということもあったし、枠もそのまま5になる可能性が高いと思うから、その5枠をうまく使う意味でも人数いてくれるのはありがたい。外国人を担当してる渉外の人たちが部屋に来てくれた。向こうの要望も聞いたし、こちらの要望も伝えさせてもらったし。その中で来てくれた選手をより良くしていこう、よくできる方法を一緒に探しましょう、ということができた。同じようなことをできれば、今年もスムーズにクリアしていけると思う。

 ――外国人の補強を含めて、チーム全体に一体感がある。
 矢野監督 本当に渉外の人が頑張ってくれている。条件はうちよりも上のチームがあったと思う。スアちゃん(スアレス)にオレも思いを伝えた。「日本一になるためには絶対にスアちゃんの力が必要やから、日本に帰ってきてくれよ。でも、スアちゃんはアメリカで野球やったことないから、そこに対する思いがあるのはオレも周りから聞いている。だから、そのことも一選手として分かっているつもりやし、アメリカを選択するのであればもちろん尊重する。ただ、オレらの思いだけは伝えさせてほしい、と。今シーズンもスアちゃんのおかげでこの位置にいる」って。オレがうれしかったのは、それはオレだけの言葉ではなくて、一樹(井上ヘッドコーチ)も言っているし、筒井壮(外野守備走塁兼分析担当コーチ)も同じことを言っている。その他のコーチもみんなが言ってくれているのを聞いていたからね。オレ一人の力でチームを強くするなんて、まず無理やから。みんなで強くする。1年目の「オレがヤル」というのが、本当にそうなってきてくれている。スローガンて1年1年変わるけど、1年目だけじゃなく2年目の「It’s 勝(笑) Time!」もやりたいことやし、何か残せるものとなれば、オーバーかもしれんけど、オレたちは感動とか夢を与えることをやりたい。子どもたちがタイガースの試合を見たときに「こんな選手になりたいな」と思うには、オレたちが生き生きして楽しんでいる姿じゃないといけない。そういうことも全部含めて、手応えがすごくある。

 ――では、優勝には何が必要なのか。
 矢野監督 挑戦して超えて、ということかな。オレは自分自身を超える、の超える。常に自分超えの毎日を過ごしてほしい。木浪がショートで活躍すれば、他の選手の心が「明日も出られへんな」と揺れることもあるかもしれない。でも、それでモチベーションが下がっても、例えば北條はうまくならない。そうではなくて「木浪が3本もヒットを打ったけど、もっと練習して今日の自分よりうまくなってやんねん」と練習してくれたら、北條が木浪を超えていくことができる。チームワークって、仲良しのチームワークは一切いらない。むしろ、バチバチのライバル意識を持って「お前なんかに負けるか」と思ってやってほしい。(チームとして)エラーも多いかもしれないけど。オレらが背中を押して取り返せるし、それはバッティングでも、声でも取り返せる。それプラス、練習方法の提案とかで、オレらが引っ張っていくことも必要やし。「挑」「超」の二つはあり方なんだけど、「頂」という言葉で、初めて勝つことに意識を置いたのは3、2位と来たから。オレのなかで、チームとして積み重ねてきてるものがあるなら、もっとみんなで「頂」を目指そうぜ、ってことで明確にしていこうと。「挑超頂」ってめっちゃ良いなと思って。

 ――今季はチーム全員で「頂」を目指す。
 矢野監督 「頂」を目指すのは、ごく一部の選手、レギュラーだけでいい。西とか健斗、大山、近本、梅野っていう中心選手だけで十分。それ以外はライバル意識を持って。いつも言うんだけど「チームの勝利に貢献する」って言うのは、ヒーローインタビューで一切いらんし、それはレギュラー、チームを引っ張る立場の選手だけで良い。そうではなくて「オレが何としても試合に出てやる」という意識でやってくれたら、それでいい。それがチームに貢献していることになる。それができたら、勝手に「頂」に行ってるしね。新しいスローガンにはなってるけど、19、20年も生きてるとなれば、勝手に行ってると思う。

 ※1 6月19日開幕の新日程では移動による新型コロナ感染拡大防止のため、セ・リーグは当初関東圏で試合を開催。阪神は開幕5カード連続ビジターゲームで4勝10敗の6位と出遅れた。
 ※2 巨人戦は8勝16敗で9年連続の負け越し。東京ドームの開幕8連敗は同球場8年ぶり2度目のワースト記録。
 ※3 巨人戦の74得点はカード別最少で唯一の2桁。対先発投手47得点も同じく最少。
 ※4 西勇は防御率2・26のうち、巨人戦でカード別最高の1・77。3勝は高橋(神)と並びリーグ最多。
 ※5 10月5日の甲子園。自己最多14奪三振と無四球でプロ初完投勝利。チームの巨人戦連敗を2で止めた。

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