【阪神新人連載】佐藤輝、近大・田中監督が見抜いた潜在能力は見事開花した

[ 2020年12月13日 11:00 ]

牙を研ぐルーキー2020 1位・佐藤輝明内野手(5)

10月18日、関西学生野球のリーグ通算本塁打記録を塗り替えた佐藤輝

 たったワンスイングだった。大学進学を見据え、輝明は仁川学院の2年後半から関西の複数の大学に練習参加。最後に参加した近大で、田中秀昌監督(63)の目に留まった。

 「捕手できてはじめは守備練習のノックからしたんですけど、1秒8台の肩をしているんで、いい肩してるなって印象から始まって。バッティングのワンスイング見ても、もうヘッドスピードが速いんで、もうこれやなと。将来うちの大学の軸になる選手で、プロにいける素材やと思いました」

 雨のため室内で行われた練習だった。「馬場監督(仁川学院元監督)は本当やったら外でバッティングの飛距離を見てほしいんですけど…と言ってましたが“このスイング見たら素晴らしさが分かりますわ”と返しました」。上宮高時代には元木大介(巨人ヘッドコーチ)や黒田博樹氏らを育てた豊富な指導歴で、潜在能力を見抜いたのだった。

 田中監督は「とにかくバッティングを生かしたいと思った」と1年春から「5番・左翼」で起用。「高めのボールでも低めのショートバウンドでも全部振っちゃうくらい。振るということが大切なことなので、そこは辛抱しながら使い続けました」。輝明も「プレッシャーに思ったことはない。自分のやるべきことをやるだけ」とひたすら練習に打ち込んだ。

 指揮官の我慢は実を結ぶ。高校時代にジム通いで鍛えた肉体をウエートトレーニングでさらに磨きをかけ、最終的にベンチプレスは130キロ、スイングスピードは160キロを計測。「トレーニングに関しては彼はストイック。飛距離は自分が見てきた中でナンバーワンです」と田中監督が語るとおり、関西学生リーグの記録を更新する通算14本塁打と、最優秀選手2度、ベストナイン3度の受賞は、本人の努力のたまものだった。

 優勝で有終の美を飾った今秋の関西学生リーグの終了翌日。輝明はミーティングで後輩らへのあいさつで、同級生の谷本主将への感謝を述べたという。「4年間でチームの勝利のために動けるようになった。人間的にも成長した」。野球以外での姿にも目を細めた恩師は、教え子の飛躍を願い、エールを送った。

 「打つだけとかなら誰でもいるけど、三拍子そろっているのが彼の良いところ。あとは技術を高めてフォーティー・フォーティー(40本塁打、40盗塁)を目指して積極的にやってほしい。努力家やから信じています」

 4年間で築き上げた実績と自信を胸に、輝明はプロへの扉を開く。 (阪井 日向)

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